【ライターコラム「春夏秋橙」】新加入選手紹介 第3回

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は2024シーズン新加入選手紹介企画の最終回をお届けします。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓、粕川 哲男、平野 貴也
新加入選手紹介 第3回


DF34 村上 陽介

大学で鍛え直し、帰ってきたCB

U18時代、クラブ史上初めてアカデミー選手としてU-17ワールドカップへ出場を果たした。今も変わらぬ強みは、184cmの長躯を生かしたヘディングだ。トップ昇格も期待されていたが「キャンプや練習に参加したけど、看板選手だった菊地光将さんや河本裕之さんを見て、上がれないのは当然と思った」と課題を感じ、大学で自らを鍛え直した。

確実性を重視し組織で攻撃を組み立てる大宮のアカデミーとは違い、明治大では速攻が主体。最初は攻撃面で横パスを選ぶ癖が抜けずに戸惑ったが、縦パスの意識を強化した。守備でもハイプレス戦術のため、カウンターを受けた際に後方の広いスペースを個人で対応する能力が磨かれた。2018年に開催されたロシアワールドカップで日本代表が敗れた場面に由来する、「ロストフ」と名付けられたカウンターの応酬となるメニューは、忘れられないという。

その間、クラブはJ2残留争いに引き込まれ、降格の可能性も見えていたが「単純に、クラブ愛。4年間、戻りたかった思いを常に持ってやってきた」と迷わず戻って来た。

1年目の目標となるJ3優勝、J2復帰の目標について話す際には「必ず」と繰り返した。パワーアップしたストッパーが、愛するチームを押し上げる。

Profile
2002年24日生まれ、東京都出身。184cm/79kgFCトッカーノ→FCトッカーノU-15→大宮アルディージャU18→明治大を経て今季、大宮に加入。

DF16 植田 悠太

京都生え抜き。左利きの若き左SB

育成組織からトップチームに昇格した京都サンガF.C.を離れ、育成型期限付き移籍で加入した。プロ2年目の19歳にとっては初めての移籍で、「緊張するところもあった」と言うが、「みんな初日から話しかけてくれたので、すぐに馴染むことができました」と笑みを浮かべる。

左利きの左SBで、「攻撃が得意」と言葉に力を込める。スピードに乗った攻め上がりと左足から放たれる高精度のクロス、意外性のあるドリブルを生かして「違いを見せたいです」と意気込む。

「徹さん(長澤監督)には去年もお世話になって、徹さんを勝たせたい気持ちもあります。J3で優勝してチームを勝たせることができれば、チームの結果プラス個人の成長と価値にもつながるので、強い覚悟を持ってこのチームにきました」

J3のチームとは、練習試合で対戦したことがある。「強度はもちろん高いですし、クオリティもある。難しいゲームになると思います。練習からスキを見せないようにしていって、試合では受けて立つことがないようにしたいです」

左サイドを駆け上がる彼のプレーは、観衆の目を惹きつけるだろう。自身もNACK5スタジアム大宮でプレーすることを楽しみに待つ。

Profile
2004年76日生まれ、滋賀県出身。173cm/65kgFC瀬田→京都サンガF.C.U-15→京都サンガF.C.U-18→京都サンガF.C.を経て今季、大宮に加入。

MF45 種田 陽

アカデミー出身の“頭脳派ドリブラー”

昨季、J2残留争いに苦しむトップチームで市原吏音が躍動していたころ、彼が抜けているU18をけん引し、チーム最多の7得点で高円宮杯プレミアリーグ残留に大きく貢献したのが、種田陽だ。高校2年だった2022年からトップチームに2種登録。U-17日本代表も経験している。

小柄ながら卓越した技術を持ち、足元にボールを置けば、キープ、突破で攻撃の起点となる。ドリブラーではあるが、“突貫小僧”といったタイプではなく、どちらかといえば、頭脳派プレーヤーの印象が強い。

ボールポゼッションの中でしかけどころを察知する能力に長けており、カットインやクロスなど多彩なチャンスメークが期待できる。課題にしていたセットプレーのキック精度も向上した。

小学生の途中でジュニア(U12)に在籍して以来、クラブのアカデミー育ち。2024年の元日には、奥抜侃志(ニュルンベルク)がアカデミー出身者で初めて日本A代表デビューを果たした。先輩の背中を追う若武者は「このクラブに恩がある。1年目でも遠慮するつもりはない。全力で先発を取りに行き、チームの中心になって、勝たせられる選手になりたい」と強い意気込みを示した。トップチームでも技巧を輝かせるか、注目だ。

Profile
2005年428日生まれ、埼玉県出身。170cm/61kg。高砂SSS→ネオスFC→大宮アルディジュニア→大宮アルディージャU15→大宮アルディージャU18を経て今季、トップ昇格。

DF4 市原 吏音

目標は日本代表。サッカー界注目の逸材

昨年7月の天皇杯で、クラブ史上最年少となる18歳5日でのトップチームデビューを果たした。4日後のJ2リーグでも、クラブ最年少記録を打ち立てた。そこからがすごい。J2リーグデビューから最終節まで、17試合連続でフル出場したのである。慣れない3バックの左CBにすぐさまフィットし、攻守にクオリティの高いプレーを持続した。当時は高校3年生で、通学しながらトップチームに帯同した。慌ただしい日々の中でもケガをしないために、自分なりにコンディショニングを作り上げていった。原博実フットボール本部長は、「高校生でも数試合なら出られる。デビューから17試合連続でフル出場したたくましさは素晴らしい」と高く評価する。

カタールの地でアジアカップを戦っている日本代表に、トレーニングパートナーとして帯同した。過去には香川真司や三笘薫らもたどった道である。クラブの未来を明るく照らす特大のポテンシャルは、日本サッカー界にとっても注目の逸材なのだ。

「自分が学んできたものを、示すことができればと思う。ある意味で見られているというか、ふがいないプレーをしないようにやらなきゃいけない責任感は、より強まっています」

今シーズンは背番号4を背負い、新たな競争に挑む。「日本代表に入りたい」との目標へ近づいていくためにも、ピッチに立ってチームの勝利に貢献することを目指す。

「チームには経験豊富なCBの選手が多い。そこで勝たないと日本代表に入れるわけもないので、リスペクトしていろいろなものを吸収しながら、お互い刺激し合って、いいチームを作っていきたいです」

チームは1年でのJ2復帰を目標とする。スタッフもメンバーも入れ替わり、「雰囲気がいいと思うし、やる気というかワクワク感がある」と、気持ちを新たにする。オフザピッチからすべてをサッカーに注ぎ込める環境で、アカデミー育ちのCBは成長速度をどんどんと上げていくに違いない。

Profile
2005年77日生まれ、埼玉県出身。185cm/77kg。大宮流星SSS→大宮アルディージャジュニア→大宮アルディージャU15→大宮アルディージャU18を経て今季、トップ昇格。

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