【聞きたい放題】加藤有輝「移籍を経験したことで、技術だけでなく精神面でも強くなって帰ってこれた」

選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、アカデミー出身のGK4シーズンぶりに復帰を果たした加藤有輝 選手に話を聞きました。

聞き手=須賀 大輔

「移籍を経験したことで、技術だけでなく精神面でも強くなって帰ってこれた」


早くピッチに立ってチャントを聞きたい

――4シーズンぶりに大宮へ帰ってきた思いを聞かせてください。
「以前、在籍はしていましたけど、外に出ている3年の間にメンバーが大きく変わっていますし、今はフレッシュな気持ちでプレーできています。もちろん、帰ってきたという思いはありますし、僕を育ててくれたクラブが大宮アルディージャであることは変わらないですけど、新しいチームに来た印象のほうが強いです」

――ギラヴァンツ北九州でプレーしていた3年間は、どういう思いで大宮のことを見ていましたか。
「試合を観れるときは観ていましたが、昨季は北九州もすごく難しいシーズンだったので、大宮のことは気にしていましたけど、正直、自分のことで精一杯でした。ただ、アルディージャがJ3に降格してしまったことに対しては、皆さんと一緒で悔しかったです。それはレンタル移籍しているほかの選手も同じだと思います。今季のチームには悔しさを知っている選手も多く残っていて、彼らから昨季の話は聞いています。プレーするのは選手ですから、今季は、気持ちの部分は大切にしていきたいです」

――ここ数年は、クラブとしても変化を余儀なくされた中、加藤選手と同じくアカデミー出身の選手がクラブを離れることも増えました。どんな思いでしたか。
「自分が離れたあとも、毎年、アカデミー出身選手はトップチームに昇格していたので、それ自体はすごくうれしいことでしたけど、プロのサッカー選手としてカテゴリーを考えて移籍するのは、個人が決めることですし、悪いことではないと思っています。むしろ、アカデミー出身選手がJ1の高いレベルでプレーするのはすばらしいことです。自分はJ1にいた大宮アルディージャを知っています。そこに戻らなければいけないという気持ちはすごく強いですし、戻ってくるきっかけになったのも、クラブがJ3に落ちてしまったという事実が大きいです。今季は強い気持ちをもって勝負したいと思っています」

――とはいえ、かつて一緒にプレーしてきた選手たちとともに戦いたかった思いはありましたか?
「勝負の世界なので、そこは厳しい世界だと割り切って考えています。もちろん、寂しさはありますけど、(小島)幹敏とか一緒にやっていた選手もいますし、(昨季限りで退団した)啓輔くん(大山啓輔/現ツエーゲン金沢)とか、そういう選手たちの思いも含めてやっていきたいですね」

――その意味では、今季にかける思いや覚悟は強いと思います。
「徹さん(長澤徹監督)も昇格だけでなく、J3優勝というところを強く言っていますし、チーム戦術とかいろいろとありますけど、結局は、強い気持ちと覚悟を持ってやるだけです。J3はそういうメンタル面の経験の差が出ると思うので、チームが方向性を見失いそうになったときこそ声を掛けていきたいですし、まずは自分自身がそこに向ってやっていきたいと思います」

――大宮としては、初めてのJ3の戦いですが、J3ならではの難しさはありますか。
「リーグ全体としてはお客さんの数が少ないという面はありますが、そういう環境でもいかに自分で自分の心を燃やしてやれるかだと思います。まだまだこのチームは、チームとしても個人としても未熟だと思うので、自分たちで奮い立たせるところにこだわってやっていければと思います」

――3年間のレンタル移籍は珍しいと思います。成長を実感している部分はどこですか。
「大宮ではあまり試合に出られず、ベンチにも入れない試合が多く、北九州でも思うような試合数を重ねることはできませんでした。それでも、大宮のときに比べたらメンバーに入る試合は増えて多くの経験を積むことができました。今もカサくん(笠原昂史選手)が試合に出ていて、自分はサブという立場ですけど、チームのために何をするべきかを考えて行動できていると思います。たとえば、第2節のFC岐阜戦も後半は押し込まれましたけど、守るゴールがベンチ側だったので、セットプレーのときは声を掛けるなど、意識的にやっていました。正直、若いころの自分なら『どうせチャンスは回ってこない』といった気持ちもあったと思います。それが、移籍を経験したことで、技術だけでなく精神面でも強くなって帰ってこれたと思います」

刺激を与え立った黄金世代の仲間たち

――最近、大宮アルディージャを応援するようになった方々に向けて、加藤選手のプレースタイルを紹介したいのですが、ご自身のプレースタイルを教えていただけますか。
「攻守において幅広くプレーするスタイルが自分の特長だと思っています。攻撃で言えば、ビルドアップに関わる部分もそうだし、今はハイラインでやっているのでスペースをコントロールするところもそうですね。守備面で言えば、クロス対応やシュートストップなど基本的な部分を大事にしつつ、全体的に幅広く守ることによって、チームを救える確率は上がると思っているので、そこは意識してやっています」

――期限付き移籍をする前を知る人たちからはどんな声をかけられますか。
「ファン・サポーターのみなさんは僕の若いころしか知らないので、『大きくなったね』といったように、“親心”というか、“親目線”で見てくれていると思います()。プレーのことよりも、そっちのほうが強いと思います」

――開幕からの2試合は、NACK5スタジアム大宮で戦いました。久しぶりにあのスタジアムに立った感想を教えてください。
「サッカー専用スタジアムでサポーターの方々もたくさん入ってくれて、力強い応援を感じています。間違いなくチームの力になっています。自分としても、あのチャント(原曲:勇気100%/光GENJI)は作ってもらったときからすごくお気に入りです。サポーターの方から『あのチャントを歌いたいからメンバーに入ってね』と声をかけてもらったときは、帰ってきて良かったなと思いました。だから、早く試合に出てあの声援をピッチの上で受けたいです」

――あらためて今季への思いを聞かせてください。
1年でJ2に戻る。それもJ3で優勝してJ2に戻る。それだけかなと思います」

――そのために、どんな存在でいたいですか。
「リーダーシップを取ってやっていくことは大事ですよね。年上の選手もいますけど、ピッチに立てば年齢は関係ないですから。北九州での経験も生かして、しっかりと引っ張ってやっていきたいと思います。自分はプロ1年目がJ15位になったシーズンだったので、すごく良い経験をさせてもらいました。もう一度、あの舞台に戻りたい思いは強いです」

 

2022年には第1子が誕生

――ピッチ外の話も聞かせてください。大宮に帰ってきたと実感する場面はいつですか。
「実家にすぐに帰れることじゃないですかね()2022年に子どもが生まれたのですが、奥さんも関東出身なので、実家が近いのは奥さんにとっても安心だと思います。北九州にいたときはお互いになかなか実家に帰れなかったので。大宮に戻ってきて家族で過ごす時間も長くなりましたし、すごくいいことですね」

――子育てを頑張っているという情報を聞きました。
「誰からの情報ですか()。まあ子どもはかわいいですよ。1歳半で、少しずつ自分でできることが増えてきたんですけど、今はイヤイヤ期の真っ最中です()。北九州のときには子どもを抱っこしながら入場することができたので、大宮でもぜひやりたいです」

――出身地である伊奈町の“魅力発信大使”をされていますね。
「伊奈町はとてもいいところですよ。魅力発信大使は2021年からやらせてもらっていて、つい先日も取材を受けました。伊奈町はバラの花が有名で、今年の5月には伊奈町で“ばらサミット”(ばら制定都市会議)というイベントがあるので、自分も子どもを連れて行けたらと思っています」

――オフの日はどのように過ごしていますか。
「僕も妻もアクティブなので、どこかしらに出かけていることが多いです。最近は、子どもが退屈しないようにショッピングモールによく行きます。選手たちとで言えば、開幕前に(茂木)力也くん、(杉本)健勇くん、(浦上)仁騎くんたちとゴルフをしました。このあたりは近場にコースがたくさんあるので、また行きたいですね」

FOLLOW US