選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、ともにアカデミー出身の関口凱心選手と村上陽介選手による“大卒ルーキー対談”をお送りします。
聞き手=戸塚 啓
すれ違いのアカデミー時代
──キャリアを調べると、関口選手は大宮Jr.ユースに、村上選手は大宮U18に在籍しています。でも、アカデミーでは一緒にプレーしていなんですね。
関口「すれ違いです(笑)」
村上「僕は高校から大宮U18に入ったので。凱心の存在は知ってましたけどね。大学の公式戦で、2度対戦したことがあります」
関口「あとは練習試合でも。夏休みの合宿で対戦したことがあるよね」
村上「お互い試合には出てたけど、別に話す感じでもなかった」
関口「Jr.ユースのチームメートが陽介と同じ明治大学へ行ったので、試合をしてもその彼としゃべることが多かったです。大宮U18出身なのは知ってました。何となく顔見知り、という感じですかね」
村上「普通に話すようになったのは、プロになってからです。あっ、でも、去年の3月ぐらいに話したか。大宮のクラブハウスで仮契約のサインするときに、凱心がちょうど練習参加に来ていました。そのときに俺は決まってるんだって話をして、凱心もその1週間後ぐらいに決まったって連絡をもらいました」
関口「あとは、同じところをケガしたねって話もしたよね」
──関口選手は去年の11月に右足の中足骨を手術していますが、村上選手はその前に同じ個所を手術したんですよね。
村上「第5中足骨がずっと悪くて、骨折線が入ったままやっていて。痛くなくて症状が出なかったんで保存治療でやってたけど、 ほかのケガも重なってプレーできなくなったので、そのタイミングで手術しようと。もうあと1ミリぐらいで、折れるって診断を受けてたので」
関口「僕は手術をするような大きなケガをしたことが、これまではありませんでした。去年の夏ごろに痛めて、俺も1回、保存治療で手術を見送って、でもまた折れちゃったので。復帰するまで5カ月ぐらいかかりました。大学で残りの試合に出られなくなったのは悔しかったけど、できるだけ早く直そうって思いでやっていました」
村上「俺は手術の後に肉離れもしたので、大学4年時はトータルで半年弱ぐらい離脱しました。自分の武器は何かと言ったら、プレー面では対人とかヘディングで、それと同じぐらいにケガをしないことを強みにしていました。ケガをすることに慣れてなかったので、ケガをしすぎちゃったなっていう感じです」
関口「最初はやっぱり落ち込みましたけど、初めてのケガだったこともあって、この機会に強くなろうと考えました。できる範囲で筋トレをやったり、体を見直したり。試合に出られないのは悔しかったけど、キャプテンだったし、自分にできることを探して。 仲間に伝えられることとか、やれることはあったので」
どちらもAB型の変わり者?
──お互いについて聞かせてください。
村上「凱心は変わってるよね(笑)。ちょっと抜けてるっていうか」
関口「そうかも。AB型っぽい、と言われることもある(笑)」
村上「俺もAB型っぽいというか、ちょっと変わってるみたいなことは言われるけど、凱心は相当天然だと思う」
関口「ABのマイナスなんだよね」
村上「一番すごいヤツだ」
関口「プラスかマイナスかは、あんまり関係ないと思うけど(笑)」
村上「今さっき新人研修で保険の話を聞いていて、講師の方から保険には種類があると。どういった種類があるか分かりますか?って質問で凱心が指されて。生命保険とか医療保険とかって答えるのが普通なのに、凱心は『明治安田生命』って、保険会社の名前を言ったからね(笑)」
関口「Jリーグのスポンサーも保険会社でしょ。普通だろ(笑)」
村上「いやぁ……」
関口「陽介は思ったよりしゃべるよね」
村上「しゃべらなそうって言われがちだけど。凱心は料理ができるのがすごい。大学のときにけっこう自炊してたんだよね」
関口「大学のときは3食すべて自炊だったから。今はお昼だけクラブハウスで食べられるけど、朝と夜は自炊だからね。でも、鍋ばっかりになっちゃうけど。一周回って鍋になったかな」
村上「SNSにあげてる写真を見て、すごいな、うまいなって思ってたけど、確かに最近鍋しか上がってない(笑)」
関口「二人で食べることはないね」
村上「外に食べにいくことはあるけど。寮は一人部屋だからね。みんなそれぞれに過ごしてるから、部屋で一緒に食べるって感じにはならない」
関口「夜ご飯が余ったら、翌日の朝飯にする。大学のときは同期とかと一緒に食べてたけど、結局一人のほうがコスパもいいし、ラクなんだよね」
──共通点はありますか。趣味とか?
関口「温泉は二人とも好きですね」
村上「でも、一緒に行かない。一人で動くのが苦手っていう人もいるけど、自分はひとりでどこでも行ける」
関口「俺、大学のときに温泉でバイトしてた。だからけっこう好きで、一人でも行くし、友だちに誘われたら一緒に行く」
村上「自分が入りたい時間ってある。邪魔されるって言ったらちょっとおかしいけど、自分のペースで入りたい。誰かと一緒に行って話しながらってのも楽しいし、一人で行くのもいいし。だからどっちでもいいかな」
関口「それ、納得。俺も一人で行くときはあるし。ジェットバスとかいろんな炭酸風呂が好きで、自分のペースで入るのがラク。友達といるのも、もちろん楽しいけど」
良い意味での緊張感
──チームの雰囲気はどうでしょう?
村上「自分はアカデミー出身なので、U18のときにもトップの練習に参加させてもらったことがあります。クラブハウスとかの環境は、ある程度分かっていて。練習からすごく引き締まっていて、強度も高い。厳しい環境でできてるな、と思います」
関口「そう思います。去年、特別指定選手でちょっと経験していて、 その雰囲気とはやっぱり違います。良い意味でピリピリしているというか、緊張感がある。このところ試合に絡めるようになってきたんですけど、絡めていない時期も試合に出ている選手を追い越すぞ、という感じがみんなにあって、チームとして全員が同じ方向へ進んでいると思います。監督の(長澤)徹さんは優勝しか考えててないと言っていて、自分たちもそう感じてます。そこは達成したいです」
村上「練習に取り組む姿勢とか、すごく尊敬できるベテランの方が多いよね。ピッチ内ではこっちからも要求するし、高い要求をされる。J3の頂点を取るための要求っていうのはコーチングスタッフも含めてあるので、 すごくいい環境だと思う。ピッチ外ではみんな気さくに話しかけてくれるし」
関口「そうそう。ピッチの中に入ったら要求はするし、されるし。雰囲気はいい」
それぞれにとってのデビュー戦
──リーグ戦デビューについて聞かせてください。村上選手は第2節のFC岐阜戦、1-0でリードする最終盤に起用されました。
村上「結構しびれる展開で、ゲームを締める役割だったので、緊張もありつつでした。そこで役割を果たせたのは一つ自信になって、今につながってると思います。ただ、大学のときから厳しい環境でやってきたという自負はあって、経験も踏んできてるところもあるので、うまく試合に入れたんじゃないかなと」
──周囲の反応は?
村上「お世話になってきたアカデミーのスタッフからは、『この早い段階でデビューできたのはもちろんいいことだけど、ここからだぞ。 これからがスタートだ』って言われました。家族はスタジアムへ観に来てくれていたので、良かったねと言ってくれました」
──関口選手はルヴァンカップが今シーズンの公式戦デビューとなりました。
関口「特別指定選手だった去年、J2リーグで試合に出ているので、あまり気負うことはなかったし、『プロとしてのデビューだ』みたいなものよりも、やってやろうという気持ちしかなかったです。ルヴァンカップのFC岐阜戦で初めて使ってもらって、納得できるプレーができなかったので、次の名古屋グランパス戦はとにかくやってやろう、という気持ちでした」
村上「NACK5スタジアム大宮で、ファン・サポーターの皆さんの前でサッカーがやれているのは、プロとして試合をやっていると実感できるよね」
関口「そうだね。あと、リーグ戦で初めて『寝ても大宮』をやって、すごくいいなって思った。自分がもっと試合に出て、何度もやりたい」
村上「分かる。『寝ても大宮』はいいよね」
下口選手の優しい言葉にゆるんだ涙腺
──印象的な先輩はいますか?
関口「シーズンの最初のころは大卒の新加入4人で自分だけ試合に絡んでなくて、クラブハウスに夕方に筋トレしに行ったりしてて。そしたら、(下口)稚葉くんが『飯行こう』って。稚葉くんは徹さんと長くやってきて、『自分もそういう時期はあったけど徹さんは必ず見てるから』って。他の先輩にも良くしてもらってるんですけど、稚葉くんにはウルっとさせられました」
「みんなが良くしてくれるけど、その中であえて名前を挙げるなら(濱田)水輝くんと(杉本)健勇くん。水輝くんはあの年齢でも第一線でプロとしてやれているのが、人間性や立ち振る舞いも含めて納得できるところがすごくあります。健勇くんはサッカーに対してすごいストイックだし、 すごく要求が高い」
──これからの自分のキャリアについては?目標やビジョンを聞かせてください。
関口「自分はコツコツとやってきたタイプなので、まずはレギュラーを取って1年間しっかり出続けことですね。海外へ行きたい目標があるので、そのために自分がやるべきことをコツコツと積み上げていきたいです」
村上「小中とトッカーノという町クラブでやっていて、 中学校は高校サッカーを見据えて国学院久我山に受験して入りました。でも、トッカーノのジュニアユース3年のタイミングで、監督から『Jリーグに行ったらどうだ』と言われて、いろいろなチームに練習参加させてもらって、大宮に縁をもらって入ることができた。最初はレベルが違うなあって感じだったけど、国体で優勝できたり、U-17ワールドカップに出れたりという運もありつつ、 明治大学に入れてプロにもなれました。目標設定はもちろんしてるのですが、一生懸命にやっていたらここまでたどり着いたような感じがます。U-17W杯に出てるので、もう一回W杯のピッチに立ちたい目標もあるけど、まずは大宮で結果を残して、そういうところが見えてくればと。プロになれたこと自体、奇跡じゃないかなってぐらいに思っていますので」
──最後にファン・サポーターの方にメッセージをお願いします。
関口「いつも熱い応援、本当にありがとうございます。自分自身はまだまだ活躍してると言えないので、しっかり試合に出て、チームの勝利に貢献したい。優勝して笑って終われるように頑張ります。引き続き、熱い応援をお願いします」
村上「いつも応援ありがとうございます。チームとしてはJ3優勝、J2昇格のために戦うだけで、僕自身は球際だったりヘディングだったり、体を張ってチームのためにプレーする姿を見せていくだけです」
戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。