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霜田正浩 監督 就任記者会見 実施レポート
6月11日(金)、霜田正浩 監督の就任記者会見をオンラインにて実施しました。霜田監督は、2021明治安田生命J2リーグ第18節・栃木SC戦 [6月13日(日)19:00キックオフ@NACK5スタジアム大宮] より指揮を執る予定です。
――就任して今の気持ちは。
「このような状況から指揮を執るのは初めてなので不安もありますが、そんなことを言っていられる状況ではないですし、チーム一丸となって戦いたいです」
――このチームでどんなサッカーを目指すか。
「状況が状況なので少し後ろ向きに、勝点を拾うためのサッカーになりがちですが、うちにいる選手たちの能力やクオリティ、ポテンシャルを考えれば、やはり相手に対して向かっていくようなサッカーをやらなければ勝点も取れないと思っていますので、しっかりアグレッシブに、前向きに、チャレンジャーとして戦っていきたいと思います」
――やりたいサッカーがある一方で勝利も求められるが、今週のトレーニングで優先したことは。
「僕がやりたいことは優先しません。今いる選手たちの能力を最大限発揮できるような戦い方を、選手、スタッフみんなで準備をしている最中なので、大宮のサッカーや僕のサッカーというよりも、今この状況で何をしなければいけないのか、目の前の相手にどうやったら勝てるのか、ということを考えながら準備しています」
――今のチームに足りないところ、必要だと思うところは。
「今までの試合も観ましたが、決して悪い試合ではない。ただ、相手のゴールに向かう迫力や推進力などは少し足りなくて、ボールを扱う技術の高い選手がたくさんいますが、なかなかその矢印が相手のゴールに向かっていかない、相手のボールを奪いにいけないなど、そういった部分でボールが相手に転がったりしているので、迫力を持って相手のゴールに向かっていけるようなサッカーをやりたいです」
――先日まで指揮を取っていた佐々木TAとはどんな話をしたのか。
「佐々木TAは非常に長くこのチームに携わっていて、このチームの歴史も、現状も、問題点もすべて分かっていると思いますので、それを踏まえて今後どうしていくのかという話をずっと共有していました」
――埼玉との縁は。
「出身も近いですし、このクラブにはコーチングスクールで一緒だった佐々木TAや強化部のスタッフなど、昔から知っていたメンバーが残っている印象があります。懐かしい顔ぶれとまた一緒に戦えることはうれしいです」
――サポーターへメッセージを。
「一番ヤキモキしているのはサポーターだと思います。選手たちもずっと悔しい思いをしていて、サポーターを喜ばせようとこの1週間で準備をしています。勝ち負けもそうですがやはり戦っている姿を見せて、皆さんが応援したくなるような試合をしたいです。こういった状況のなかで、口で言うのは簡単ですが、皆さんと一丸になるにはどうすれば良いのか、それを考えながら毎日準備をしています。ピッチで戦う僕らを見てもらって、また一緒に戦ってほしいです」
――就任までの経緯、決め手は。
「正式に連絡をいただいたのは先週です。元々対戦もしていましたし、昔から25、26年Jリーグにかかわる仕事をしてきたなかで外から見ていた大宮アルディージャの印象は、非常にポジティブで、このクラブハウスも含めてポテンシャルがあるクラブだとずっと思っていました。こういった状況とはいえ、こういった状況だからこそ、声をかけていただいて必要とされているときに、ここでやらなくてはいけないと思ったので、あまり考えずに『戦いましょう』と返事をしました」
――外から見ていたときの印象、対戦相手としての印象、実際に入ってみての印象の差は。
「あまり変わらないです。非常に良い選手が揃っているし、いろいろなところでいろいろなものが揃っていると感じます。ただ、勝負の世界ではよくありがちですが、ちょっとボタンをかけ違ったり、いろいろなところが噛み合わないとチームが機能しないですし、チームも選手も生き物なので、ただ単純に良い選手を揃えれば、環境が良ければ勝てるわけではありません。やはり良い素材を集めて一つにならなくてはいけないと思っています」
――システムについて。
「歴史的に見ても4-4-2でハマっていたチームだと思うので、4バックの方がやりやすいのかなと思っていますが、基本的に僕はシステムの概念があまりないので、上から見てシステムがわからない方が良いと思っています」
――選手に対して活力を与えるような声がけを意識しているのか。
「監督の仕事はそんなに多くなくて、トレーニングとミーティングにどれだけ命をかけられるかだと思っています。落とし込む時間がなくてもやらなければいけないことを選手たちがピッチのなかで体現するには、いろいろなことを共有しなくてはいけません。限られた時間のなかで彼らにいろいろなものを伝えている最中です」
――キャプテン、副キャプテンに期待するところは。
「練習を見たり、今まで知っていた選手や、いろいろな情報を聞いたり、実際に立ち振る舞いや話した感触を踏まえ、適材適所をもう一度見直した方が良いと考えました。三門に関しては間違いなく、J1、J2で実績もありますし、何よりしっかり喋れる、味方も鼓舞できるし、味方に僕がやってほしいことを僕の代わりにピッチで伝えられる能力があると判断し、この状況では彼が適任だと考えました。俊輝と馬渡に関しては、やはり大宮への気持ち、熱い想いもあるし、彼らが本当にやりたいと言ってくれたので、この3人を中心にチームをまとめていきたいと思っています」
――オファーをもらったときに自分の中では即決だったのか、多少の迷いはあったのか。
「順位や数字、残り試合数などを見たときに、僕自身のことだけを考えればいろいろなリスクがあるのかなとちょっと思いましたが、やはり社長や強化部の皆さんの『大宮をなんとかしたい』という気持ちがすごく伝わってきたので、やらなければいけないと思って即決しました」
――この順位でリスクもあると思うが、得点をたくさん取るためのサッカーをしていくのか。
「僕のやりたいサッカーを優先することはしません。それは落とし込む時間もないですし、今から選手たちと過ごせる時間を考えれば、良いサッカーができたり僕のやりたいことができても勝てないというわけにはいかないので、やはり勝つことから逆算します。でも勝つための手段として、僕がやりたいサッカーと彼らの良いところが合致する部分があれば、それは今後のためにも続けていきたいです」
――どういった理由があって下位に沈んでいると感じるか。
「こうなった理由については僕はずっと見ていたわけではないので分からないですが、今この時点で何をしなければいけないかというのはここ3日ぐらいで分かってきました。やはり選手たちが躍動していないですし、なぜ躍動できていないかというと、選手たちが迷っている、選手たちが何をしたら勝てるのか、どうやって点を取るのか、どうやってボールを奪うのか、といった共通意識の部分で、良い選手たちだからこそ、それぞれが自分で持っているものがあり、そこがバラバラになると良い選手が揃っていてもなかなか勝てないと感じます。今僕がやらなければいけないことは、メンタルのリカバリーと、彼らがどうすればピッチのなかで躍動できるか、彼らの力を100%に近いレベルで引き出してあげられるか、それをチーム戦術に落とし込んでいきたいと思っています」
――最初のミーティングで選手たちに伝えたことは。
「基本的には『ピッチの中で戦える』と僕は思っています。今までのことやこれからのこと、数字や順位を考えると不安が先に出てしまいますが、不安を持ったままピッチに選手を送り込みたくないですし、彼らの不安を取り除くことを最優先したいと思っていますので、メンタルの話を選手たちにしました」
――具体的にはどういったことを伝えたのか。
「誰のためにサッカーをやっているのか、自分がサッカー選手としてJリーガーになれて大宮アルディージャのような良いクラブに入れて、そこで満足しているのはなぜか、勝てないことを人のせいにしていないか、自分がもっと戦えないか、もう一度自分自身に問うことと、それは誰のために戦っているのかということをもう一度考えろと話しました」
――それを受けての選手たちのリアクション、練習の雰囲気は。
「結果は分かりませんけれども、結果に向かうプロセスとしては、選手たちは非常に前向きに取り組んでくれていますし、練習の雰囲気もすごく良くなっていると思います。一番悔しい思いをしているのは選手なので、そこから不安や結果が出ない焦りにつながりがちですが、そこは『心配しなくていいよ』と背中を叩いてあげなくてはいけないと思いますし、そういった精神的な安定感があれば、彼らの力からすればピッチで良いゲームができると思っています」
――現実に即したサッカーをやるなかでもベースとなる部分は。
「山口やいろいろなところでも言ってきましたが、自分のなかで、『こうやって点を取りたい』『こうやって相手のボールを奪って、こうやってゴールを守りたい』というプレーモデルは作ってきているものがありますが、それを全部彼らに要求するタイミングではないと思っています。ただすべてのトレーニング、ミーティング、声かけはそこから逆算して選手たちにアプローチをしたいと思っているので、まったく自分がやりたくないサッカーを、勝つためにここでやらなくてはいけないとは思っていないです」
――チーム内での甘さ、自立という部分について。
「まだまだそこの部分は足りないと思っていますし、自分で考えて自分で走るという決断、責任が少し弱いのかなと思っています。チームが勝つためにいろいろなタスク、役割を与えていますが、やはりそれも『自分で判断して、自分で責任を持って、自分で走れ』というようにしていますし、そこから自立できるようにしていきたいです。勝っているときはそういったものが目立ちませんし、課題も隠れてしまいます。今はそういったものを掘り起こして向き合うことが大事で、その先に勝利があると思っています。勝っていたり、なんとなくうまくいっていたり、なんとなく選手が活躍したりという選手の能力頼みの状況だと、チームの根本的な問題は表に出てこないものです。今はいろいろな問題が表に出てきてこの順位になっていますが、やはり選手たちのメンタルをもう一度復活させて、チームの雰囲気を良くして、チームメイトのために、チームのために走れる選手を、僕がピッチに送り出すことが大事だと思っています」
――残り25試合、何を目標に戦っていくか。
「残り25試合での具体的な勝点、得点、失点の計算はもちろん考えてはいますが、そこが大事なのではなく、やはり目の前の試合でどれだけ戦えるか、どれだけ勝点3を取れるか、勝ち続けられるか、そのためには何が必要かといった部分が僕らには一番大事だと思っています。残留は結果なので、結果に向かうプロセスの中で僕らがやるべきことは目の前の試合に勝ち続けることです。勝点3を取り続けることで目的が変わるかもしれないし、それはやってみないとわかりませんので、目の前の試合を戦いながら勝点がどれだけ積み上がっていくかで、その都度目標を変えたいと思います」
――このチームを復活させる自信と、そのカギは。
「復活させる自信というよりも、復活させたいという気持ちの方が強いです。カギは大きく分けて2つしかなくて、『選手たちのメンタルを充実させること』『ピッチの中で起きる現象、僕らがやろうとしているサッカーを、ちゃんと11人、18人、33人が皆で同じ絵を描くこと』だけだと思っています」
――アカデミー出身を中心に若い選手が多いが、どうとらえているか。
「基本的には若い選手を起用するのは好きな方ですし、毎日のトレーニングのなかで、若い選手がベテランにも認めさせるようなプレーができれば、僕は年齢は関係なくピッチに送り込みたいと思っています。こういうチーム状況の中で若いスターが出てくることも必要ですし、ベテランの力も必要ですし、そういう意味では今いるすべて選手の力が必要です。そこは偏見なく、将来を考えて若手を育てるような余裕もないですし、一戦必勝で次の試合に勝つための11人、18人を日々のトレーニングから選んでいくことになると思います」
――コーチングスタッフの入れ替わりはないのか。
「メンバーの変更はありませんが、コーチングスタッフの中で役割を変えるなどはしました」
――山口時代は相手を分析して戦術に落とし込むスタイルだったが、分析スタッフの補充等はあるのか。
「新しく外から人を入れる余裕はないですが、分析を主にやってもらう役割を今いるコーチに預けています」
――先日の天皇杯ではベンチキャプテンとして三門選手を置いたということだが、その意図は。
「サブの選手にも一緒に戦ってほしい、先発で出ようがサブで残り5分出ようが、それはリレーと一緒で第1走者と第4走者の役割が違うだけの話で、それぞれが入れ替わるときもあります。誰が頭から、誰が途中から出ようが、チームとして戦うこと、ベンチメンバーがピッチに出ている11名を本気で心の底から応援して、叱咤激励して、ベンチも一緒に戦っている雰囲気を作りたい、それをベンチキャプテンがしっかりまとめて、ピッチ内キャプテンとともに、チーム18人で戦う雰囲気を作りたいという意図でした。今後も毎試合、ベンチメンバーの中から決めたいと思っています」
――補強について。
「タイミングもありますし、お金の問題も、人数の問題もありますので、こういう順位だから何でもかんでも補強してくれと考えがちですが、まずウインドーが開くまでは、今いる選手たちがどれぐらいできるのか、能力や層の厚さを実際に自分の目で確かめたいですし、僕は今、このメンバーで十分戦えると思っていますが、その時点で本当に必要な部分があれば強化部とも相談をしたいと思います。ただ、補強ありきではなくて、今いるうちの選手たちをどれだけ伸ばせるか、どれだけ今いる選手たちで、1+1の合計を11ではなく、13にする、15にするというように、全体を機能させて部分の総和に勝る状況を作りたいです」
――ミーティングで選手に「貯金でプレーするな」と伝えたそうだが、どういった意味か。
「これまでもいろいろなところで指導者として選手たちに向き合ってきましたが、選手たちの能力や経験、感覚、才能だけに頼ったチーム作りはあまりしたくないと思っています。良い選手の発想や能力で試合に勝つことももちろんありますが、どこかで限界がきます。選手の貯金がなくなったときにチームが勝てなくなるという状況は避けたいです。ですので、どんなに良い選手でももう一度貯金ができるようなサッカーをやりたいと思っていますし、そういった練習やミーティングをしたいと思っています。どのサッカー選手も、いくつになっても『まだまだうまくなりたい』という気持ちを絶対に持っていると思うので、自分がここでもう一度サッカーに対して前向きに取り組んで、サッカーがうまくなって、貯金をもっともっと増やして、ベテラン選手は一年でも長く現役を続けられるように、若い選手は早くベテランを引きずり落とせるようになってほしいですし、その個人個人の成長でチームを強くしたいと選手たちに話しました」
――就任後、コーチ陣に伝えたことは。
「まずは自分を知っているか、知らないか。僕がどういうサッカーをやりたいか、どうやって選手たちに接したいかなどを伝えました。まずはコーチに理解してもらわないと困りますし、僕は全部を自分でやってしまうタイプではないので、自分ができないことはコーチにやってもらうおうと思っています。1人で33人に伝えるよりも、5人で33人に伝えた方がより浸透のスピードは速くなると思っていますので、まずはコーチと僕がコミュニケーションを取って、コーチの誰が選手と話をしても僕と同じことを喋れる状況にしたいです。もちろん初めて仕事をするメンバーもいますし、性格もバックグラウンドもまだ知らないコーチもいますが、これまでの経験のなかでコーチの重要性やスタッフに求めるこことなどは経験させてもらってきましたし、今はコーチが高いモチベーションで仕事をしてくれているので、僕がやることが少なくなってきていてうれしいです」
――コーチも選手も自分に対していろいろと言ってきてくれる方がうれしいタイプなのか。
「自分から言いに行ってしまう方です。コミュニケーションが一番だと思っていますし、選手と顔を合わせて話してみないと分かりません。いきなり監督に話しかけてくるような選手はいませんし、やはり自分から降りていかなくてはいけないと思っています。時間のないなかで良いコミュニケーションを取ろうと思ったら話す時間を増やさなくてはいけないですし、コーチにもアンテナを張ってもらって手伝ってもらいますが、基本的には僕が自分でコミュニケーションを取りたいなと思っています」
(写真:高須力)
霜田正浩 監督 コメント
――就任して今の気持ちは。
「このような状況から指揮を執るのは初めてなので不安もありますが、そんなことを言っていられる状況ではないですし、チーム一丸となって戦いたいです」
――このチームでどんなサッカーを目指すか。
「状況が状況なので少し後ろ向きに、勝点を拾うためのサッカーになりがちですが、うちにいる選手たちの能力やクオリティ、ポテンシャルを考えれば、やはり相手に対して向かっていくようなサッカーをやらなければ勝点も取れないと思っていますので、しっかりアグレッシブに、前向きに、チャレンジャーとして戦っていきたいと思います」
――やりたいサッカーがある一方で勝利も求められるが、今週のトレーニングで優先したことは。
「僕がやりたいことは優先しません。今いる選手たちの能力を最大限発揮できるような戦い方を、選手、スタッフみんなで準備をしている最中なので、大宮のサッカーや僕のサッカーというよりも、今この状況で何をしなければいけないのか、目の前の相手にどうやったら勝てるのか、ということを考えながら準備しています」
――今のチームに足りないところ、必要だと思うところは。
「今までの試合も観ましたが、決して悪い試合ではない。ただ、相手のゴールに向かう迫力や推進力などは少し足りなくて、ボールを扱う技術の高い選手がたくさんいますが、なかなかその矢印が相手のゴールに向かっていかない、相手のボールを奪いにいけないなど、そういった部分でボールが相手に転がったりしているので、迫力を持って相手のゴールに向かっていけるようなサッカーをやりたいです」
――先日まで指揮を取っていた佐々木TAとはどんな話をしたのか。
「佐々木TAは非常に長くこのチームに携わっていて、このチームの歴史も、現状も、問題点もすべて分かっていると思いますので、それを踏まえて今後どうしていくのかという話をずっと共有していました」
――埼玉との縁は。
「出身も近いですし、このクラブにはコーチングスクールで一緒だった佐々木TAや強化部のスタッフなど、昔から知っていたメンバーが残っている印象があります。懐かしい顔ぶれとまた一緒に戦えることはうれしいです」
――サポーターへメッセージを。
「一番ヤキモキしているのはサポーターだと思います。選手たちもずっと悔しい思いをしていて、サポーターを喜ばせようとこの1週間で準備をしています。勝ち負けもそうですがやはり戦っている姿を見せて、皆さんが応援したくなるような試合をしたいです。こういった状況のなかで、口で言うのは簡単ですが、皆さんと一丸になるにはどうすれば良いのか、それを考えながら毎日準備をしています。ピッチで戦う僕らを見てもらって、また一緒に戦ってほしいです」
――就任までの経緯、決め手は。
「正式に連絡をいただいたのは先週です。元々対戦もしていましたし、昔から25、26年Jリーグにかかわる仕事をしてきたなかで外から見ていた大宮アルディージャの印象は、非常にポジティブで、このクラブハウスも含めてポテンシャルがあるクラブだとずっと思っていました。こういった状況とはいえ、こういった状況だからこそ、声をかけていただいて必要とされているときに、ここでやらなくてはいけないと思ったので、あまり考えずに『戦いましょう』と返事をしました」
――外から見ていたときの印象、対戦相手としての印象、実際に入ってみての印象の差は。
「あまり変わらないです。非常に良い選手が揃っているし、いろいろなところでいろいろなものが揃っていると感じます。ただ、勝負の世界ではよくありがちですが、ちょっとボタンをかけ違ったり、いろいろなところが噛み合わないとチームが機能しないですし、チームも選手も生き物なので、ただ単純に良い選手を揃えれば、環境が良ければ勝てるわけではありません。やはり良い素材を集めて一つにならなくてはいけないと思っています」
――システムについて。
「歴史的に見ても4-4-2でハマっていたチームだと思うので、4バックの方がやりやすいのかなと思っていますが、基本的に僕はシステムの概念があまりないので、上から見てシステムがわからない方が良いと思っています」
――選手に対して活力を与えるような声がけを意識しているのか。
「監督の仕事はそんなに多くなくて、トレーニングとミーティングにどれだけ命をかけられるかだと思っています。落とし込む時間がなくてもやらなければいけないことを選手たちがピッチのなかで体現するには、いろいろなことを共有しなくてはいけません。限られた時間のなかで彼らにいろいろなものを伝えている最中です」
――キャプテン、副キャプテンに期待するところは。
「練習を見たり、今まで知っていた選手や、いろいろな情報を聞いたり、実際に立ち振る舞いや話した感触を踏まえ、適材適所をもう一度見直した方が良いと考えました。三門に関しては間違いなく、J1、J2で実績もありますし、何よりしっかり喋れる、味方も鼓舞できるし、味方に僕がやってほしいことを僕の代わりにピッチで伝えられる能力があると判断し、この状況では彼が適任だと考えました。俊輝と馬渡に関しては、やはり大宮への気持ち、熱い想いもあるし、彼らが本当にやりたいと言ってくれたので、この3人を中心にチームをまとめていきたいと思っています」
――オファーをもらったときに自分の中では即決だったのか、多少の迷いはあったのか。
「順位や数字、残り試合数などを見たときに、僕自身のことだけを考えればいろいろなリスクがあるのかなとちょっと思いましたが、やはり社長や強化部の皆さんの『大宮をなんとかしたい』という気持ちがすごく伝わってきたので、やらなければいけないと思って即決しました」
――この順位でリスクもあると思うが、得点をたくさん取るためのサッカーをしていくのか。
「僕のやりたいサッカーを優先することはしません。それは落とし込む時間もないですし、今から選手たちと過ごせる時間を考えれば、良いサッカーができたり僕のやりたいことができても勝てないというわけにはいかないので、やはり勝つことから逆算します。でも勝つための手段として、僕がやりたいサッカーと彼らの良いところが合致する部分があれば、それは今後のためにも続けていきたいです」
――どういった理由があって下位に沈んでいると感じるか。
「こうなった理由については僕はずっと見ていたわけではないので分からないですが、今この時点で何をしなければいけないかというのはここ3日ぐらいで分かってきました。やはり選手たちが躍動していないですし、なぜ躍動できていないかというと、選手たちが迷っている、選手たちが何をしたら勝てるのか、どうやって点を取るのか、どうやってボールを奪うのか、といった共通意識の部分で、良い選手たちだからこそ、それぞれが自分で持っているものがあり、そこがバラバラになると良い選手が揃っていてもなかなか勝てないと感じます。今僕がやらなければいけないことは、メンタルのリカバリーと、彼らがどうすればピッチのなかで躍動できるか、彼らの力を100%に近いレベルで引き出してあげられるか、それをチーム戦術に落とし込んでいきたいと思っています」
――最初のミーティングで選手たちに伝えたことは。
「基本的には『ピッチの中で戦える』と僕は思っています。今までのことやこれからのこと、数字や順位を考えると不安が先に出てしまいますが、不安を持ったままピッチに選手を送り込みたくないですし、彼らの不安を取り除くことを最優先したいと思っていますので、メンタルの話を選手たちにしました」
――具体的にはどういったことを伝えたのか。
「誰のためにサッカーをやっているのか、自分がサッカー選手としてJリーガーになれて大宮アルディージャのような良いクラブに入れて、そこで満足しているのはなぜか、勝てないことを人のせいにしていないか、自分がもっと戦えないか、もう一度自分自身に問うことと、それは誰のために戦っているのかということをもう一度考えろと話しました」
――それを受けての選手たちのリアクション、練習の雰囲気は。
「結果は分かりませんけれども、結果に向かうプロセスとしては、選手たちは非常に前向きに取り組んでくれていますし、練習の雰囲気もすごく良くなっていると思います。一番悔しい思いをしているのは選手なので、そこから不安や結果が出ない焦りにつながりがちですが、そこは『心配しなくていいよ』と背中を叩いてあげなくてはいけないと思いますし、そういった精神的な安定感があれば、彼らの力からすればピッチで良いゲームができると思っています」
――現実に即したサッカーをやるなかでもベースとなる部分は。
「山口やいろいろなところでも言ってきましたが、自分のなかで、『こうやって点を取りたい』『こうやって相手のボールを奪って、こうやってゴールを守りたい』というプレーモデルは作ってきているものがありますが、それを全部彼らに要求するタイミングではないと思っています。ただすべてのトレーニング、ミーティング、声かけはそこから逆算して選手たちにアプローチをしたいと思っているので、まったく自分がやりたくないサッカーを、勝つためにここでやらなくてはいけないとは思っていないです」
――チーム内での甘さ、自立という部分について。
「まだまだそこの部分は足りないと思っていますし、自分で考えて自分で走るという決断、責任が少し弱いのかなと思っています。チームが勝つためにいろいろなタスク、役割を与えていますが、やはりそれも『自分で判断して、自分で責任を持って、自分で走れ』というようにしていますし、そこから自立できるようにしていきたいです。勝っているときはそういったものが目立ちませんし、課題も隠れてしまいます。今はそういったものを掘り起こして向き合うことが大事で、その先に勝利があると思っています。勝っていたり、なんとなくうまくいっていたり、なんとなく選手が活躍したりという選手の能力頼みの状況だと、チームの根本的な問題は表に出てこないものです。今はいろいろな問題が表に出てきてこの順位になっていますが、やはり選手たちのメンタルをもう一度復活させて、チームの雰囲気を良くして、チームメイトのために、チームのために走れる選手を、僕がピッチに送り出すことが大事だと思っています」
――残り25試合、何を目標に戦っていくか。
「残り25試合での具体的な勝点、得点、失点の計算はもちろん考えてはいますが、そこが大事なのではなく、やはり目の前の試合でどれだけ戦えるか、どれだけ勝点3を取れるか、勝ち続けられるか、そのためには何が必要かといった部分が僕らには一番大事だと思っています。残留は結果なので、結果に向かうプロセスの中で僕らがやるべきことは目の前の試合に勝ち続けることです。勝点3を取り続けることで目的が変わるかもしれないし、それはやってみないとわかりませんので、目の前の試合を戦いながら勝点がどれだけ積み上がっていくかで、その都度目標を変えたいと思います」
――このチームを復活させる自信と、そのカギは。
「復活させる自信というよりも、復活させたいという気持ちの方が強いです。カギは大きく分けて2つしかなくて、『選手たちのメンタルを充実させること』『ピッチの中で起きる現象、僕らがやろうとしているサッカーを、ちゃんと11人、18人、33人が皆で同じ絵を描くこと』だけだと思っています」
――アカデミー出身を中心に若い選手が多いが、どうとらえているか。
「基本的には若い選手を起用するのは好きな方ですし、毎日のトレーニングのなかで、若い選手がベテランにも認めさせるようなプレーができれば、僕は年齢は関係なくピッチに送り込みたいと思っています。こういうチーム状況の中で若いスターが出てくることも必要ですし、ベテランの力も必要ですし、そういう意味では今いるすべて選手の力が必要です。そこは偏見なく、将来を考えて若手を育てるような余裕もないですし、一戦必勝で次の試合に勝つための11人、18人を日々のトレーニングから選んでいくことになると思います」
――コーチングスタッフの入れ替わりはないのか。
「メンバーの変更はありませんが、コーチングスタッフの中で役割を変えるなどはしました」
――山口時代は相手を分析して戦術に落とし込むスタイルだったが、分析スタッフの補充等はあるのか。
「新しく外から人を入れる余裕はないですが、分析を主にやってもらう役割を今いるコーチに預けています」
――先日の天皇杯ではベンチキャプテンとして三門選手を置いたということだが、その意図は。
「サブの選手にも一緒に戦ってほしい、先発で出ようがサブで残り5分出ようが、それはリレーと一緒で第1走者と第4走者の役割が違うだけの話で、それぞれが入れ替わるときもあります。誰が頭から、誰が途中から出ようが、チームとして戦うこと、ベンチメンバーがピッチに出ている11名を本気で心の底から応援して、叱咤激励して、ベンチも一緒に戦っている雰囲気を作りたい、それをベンチキャプテンがしっかりまとめて、ピッチ内キャプテンとともに、チーム18人で戦う雰囲気を作りたいという意図でした。今後も毎試合、ベンチメンバーの中から決めたいと思っています」
――補強について。
「タイミングもありますし、お金の問題も、人数の問題もありますので、こういう順位だから何でもかんでも補強してくれと考えがちですが、まずウインドーが開くまでは、今いる選手たちがどれぐらいできるのか、能力や層の厚さを実際に自分の目で確かめたいですし、僕は今、このメンバーで十分戦えると思っていますが、その時点で本当に必要な部分があれば強化部とも相談をしたいと思います。ただ、補強ありきではなくて、今いるうちの選手たちをどれだけ伸ばせるか、どれだけ今いる選手たちで、1+1の合計を11ではなく、13にする、15にするというように、全体を機能させて部分の総和に勝る状況を作りたいです」
――ミーティングで選手に「貯金でプレーするな」と伝えたそうだが、どういった意味か。
「これまでもいろいろなところで指導者として選手たちに向き合ってきましたが、選手たちの能力や経験、感覚、才能だけに頼ったチーム作りはあまりしたくないと思っています。良い選手の発想や能力で試合に勝つことももちろんありますが、どこかで限界がきます。選手の貯金がなくなったときにチームが勝てなくなるという状況は避けたいです。ですので、どんなに良い選手でももう一度貯金ができるようなサッカーをやりたいと思っていますし、そういった練習やミーティングをしたいと思っています。どのサッカー選手も、いくつになっても『まだまだうまくなりたい』という気持ちを絶対に持っていると思うので、自分がここでもう一度サッカーに対して前向きに取り組んで、サッカーがうまくなって、貯金をもっともっと増やして、ベテラン選手は一年でも長く現役を続けられるように、若い選手は早くベテランを引きずり落とせるようになってほしいですし、その個人個人の成長でチームを強くしたいと選手たちに話しました」
――就任後、コーチ陣に伝えたことは。
「まずは自分を知っているか、知らないか。僕がどういうサッカーをやりたいか、どうやって選手たちに接したいかなどを伝えました。まずはコーチに理解してもらわないと困りますし、僕は全部を自分でやってしまうタイプではないので、自分ができないことはコーチにやってもらうおうと思っています。1人で33人に伝えるよりも、5人で33人に伝えた方がより浸透のスピードは速くなると思っていますので、まずはコーチと僕がコミュニケーションを取って、コーチの誰が選手と話をしても僕と同じことを喋れる状況にしたいです。もちろん初めて仕事をするメンバーもいますし、性格もバックグラウンドもまだ知らないコーチもいますが、これまでの経験のなかでコーチの重要性やスタッフに求めるこことなどは経験させてもらってきましたし、今はコーチが高いモチベーションで仕事をしてくれているので、僕がやることが少なくなってきていてうれしいです」
――コーチも選手も自分に対していろいろと言ってきてくれる方がうれしいタイプなのか。
「自分から言いに行ってしまう方です。コミュニケーションが一番だと思っていますし、選手と顔を合わせて話してみないと分かりません。いきなり監督に話しかけてくるような選手はいませんし、やはり自分から降りていかなくてはいけないと思っています。時間のないなかで良いコミュニケーションを取ろうと思ったら話す時間を増やさなくてはいけないですし、コーチにもアンテナを張ってもらって手伝ってもらいますが、基本的には僕が自分でコミュニケーションを取りたいなと思っています」
6月10日(木)トレーニングの様子
(写真:高須力)
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