【VENTUS PRESS】五嶋京香 前編

今回のVENTUS PRESSはWEリーグ第4節のマイナビ仙台レディース戦で加入後初ゴールをマークしたボランチ・五嶋京香 選手です。ケガから復帰し、本格的に中枢を担う五嶋選手を深堀りします。

Vol.22 文・写真=早草 紀子

「引っかけるプレーで好機を作りだします!」(五嶋京香)

—昨シーズンはAC長野パルセイロ・レディースのCBとして優秀選手にも選出されました。
まさか自分が選ばれるとは思っていませんでした。しかも選手とスタッフが選ぶものじゃないですか。これは自信になりました。身長156㎝のCBということで、味方を動かして守ったり、駆け引きの面では工夫をしてました。相手の足がボールから離れる瞬間を狙うアジリティを生かした奪い方も編み出しました()

—どんなところが味方に信頼され、相手に嫌がられたと思いますか?
信頼で言うと、自分がそこにいれば点を取られない安心感があるとチームメイトから言ってもらったことがあります。相手からは・・・どう見えてるんだろう? やっぱり足の運びかな?

—CBとして評価されて、VENTUSへ来たら中盤を任される。この切り替えは・・・
そりゃ難しかったですよ! もともとボランチ経験はありましたが、6年くらいやってなかったので。ただ思い当たるとすれば・・・オファーが来たときに代理人には「一応ボランチもできる」と伝えていたので、それでかなと()

—しかも用意されていた背番号は「10番」でした。
ただの数字ではないですよね。最初は10番のCBかな~と思うようにしてました() 幼い頃につけたことがある番号ではありましたが、日本のトップリーグでの10番はプレッシャーですよ。でもやるしかない! という気持ちで受け入れました。

—インターセプトを得意とする五嶋選手の特長を生かせるポジションではありますよね。
そうですね。でも結局いまは、CBからアンカー、ボランチ、インテリオール(トップ下)まで練習ではなんでもやってます。いま私に求められているのは相手を“引っかける”ことだと感じています。なので対戦相手によって自分の位置を動かしてもらって構わない。そこで引っかけて、カウンターにつなげていく形がいまはこのチームの好機を生むと思ってます。

—カップ戦ではその片鱗を見ることができました。ここからというときに鎖骨を骨折するという不運に見舞われて戦線離脱を余儀なくされました。しかも古巣戦でしたよね。
開始10秒くらいでした・・・一応イノ(井上綾香)には「ごめん、折れた」って伝えてたんですよ()。でもちょうど源ちゃん(源間葉月)が痛んでたから二人出るのはヤバイと思ってプレーを続けてたんですけど、無理でした。本当に悔しかった・・・。当初より一ヶ月早く復帰できたので、ここからです!

—これだけいろんなポジションをこなしていれば、もうトップもできるんじゃないですか?
さすがにそれは無理()

—いまのポジションならゴールも狙えます。実際、マイ仙台戦ではしっかり詰めて崩しから加入後初ゴールを決めました。
(仲田)歩夢さんがボールを持ったときに私がフリーだったので「スルー! 」と声をかけて・・・きれいに決まってよかったです。前めのポジションになったのでゴールはもちろん狙ってます! いままでになく、ゴールを狙えるのはうれしいことでして・・・。これまでは必要なかったけど、ちょっと久しぶりにシュートの練習しないといけないなって思ってます()

—以前はCBとしてお話を伺いましたけど、中盤となると目標設定も変わってきますよね。
あ~それはいわゆる数字ですね? プレッシャー()! でもいままでアシストするポジションじゃなかったので、アシストと得点で合わせて10! ・・・は言い過ぎですかね?

—いいと思います! 昨シーズンのVENTUSの総得点が17点ですから・・・
え、半分以上に絡まないとダメってことになる! 無理無理無理無理・・・・いや、でもそこを狙ってマークできれば絶対に上位に行けますよね。合わせて10点で行きましょう!

—ボランチとして臨むシーズン。気になる対戦はありますか?
先日のさいたまダービーは出られなかったんですが、三菱重工浦和レッズレディースは猶本()さん、柴田(華絵)さん、塩越(柚歩)さんとタレント揃いで収縮する中盤に、どこまで対抗できるのか、一番厚い中盤だからこそ、アウェイでの対戦は気合いが入ると思います。そしてしっかりコンディションを整えて古巣・AC長野戦もしびれるはずです。AC長野は監督も変わって調子がいいですから、私としても負けられないです。

—加入したばかりの頃、「模索しているチームであることは大宮の魅力の一つ」と言ってましたよね。現状、その模索しているところから見いだせていることはありますか?
ポゼッションをしたいサッカーですよね。AC長野だと前に蹴るサッカーだったけど、VENTUSは回すサッカー。だけど、まだまだボールを持ててはいません。ビルドアップがまだ十分にできてないから、そこは試合を重ねるにつれて良くしていきたいですね。

—なかなか長くホームゲームで五嶋選手のプレーを披露できていません。どんなプレーを見ることができるのか、ファン・サポーターのみなさんは楽しみにしてると思います。
CBのときは予測のスピードはあると思ってたんです。でないとセカンドボールは拾えない。その意識はもってます。ときどきサポーターの方が、「ボールが落ちるところに五嶋選手がいる」「ポジショニングがいい」とって言ってくれたりすることがあって、それはまさに予測ですよね。地味ではありますが、インターセプトとセカンドボールの回収を見どころとしておきましょうか()

—ポジションが前になったことで以前よりも思い切りインターセプトにも行けてるように見えます。
それはありますね。CBだとそれが許される状況が限られてしまうので・・・

—でもトップ下でも試されるということは攻撃的センスも潜んでいるのかもしれませんよ?
それはないと思うんですけどねぇ。でもシノさん(大野忍コーチ)に、「裏に出るタイミングが良い。出し手が見えてないからボールを出せてないけど、そこは続けてほしい」って言われたことはあります。確かに試合中に2列目から背後を狙う動きがなくなってしまうときがあるんです。自分の感覚では行けると思ったときに行ってるだけなので、そのタイミングが良いのか悪いのかは全然わからないんですけど、どうやらそれができてるっぽいです()

—あるじゃないですか(笑)守備的要素と攻撃的要素が交じり合ってるから、ポジションも流動的になるのかもしれないですね。
どこで使われようと準備はしているつもりです。やっぱり共通しているのは攻守で引っかけ役だということ。自分たちの攻撃のときは4-1-4-1だからトップ下になるけど、守りは4-4-2、なので“幅広いボランチ”と理解してます。一戦ごとにしっかりと積み上げていけば、必ずゴールに結びつけることができるチームだと思いますので、NACK5スタジアム大宮での応援をよろしくお願いします。


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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