今シーズン、中盤の底で存在感を発揮しつつある西澤日菜乃選手。冷静、かつアグレッシブなプレーで攻守ともに貢献が光ります。ケガでの長期離脱があったからこそ見えた、新たな可能性もあったよう。もちろん虎視眈々とゴールも狙っています。西澤選手の情熱が詰まった今シーズンの抱負をお届けします。
Vol.42 文・写真=早草 紀子
—ケガを負った網走キャンプ、今シーズンは無事に帰還できました。
本当によかったです・・・芝も深めなので、特に昨季ケガをした初日は怖かったですが・・・(笑)無理をしないように丁寧に乗り切りました!
—網走ではビルドアップの落とし込みを行ったんですよね?
柳井(里奈)監督になって決め事があまりない。選手間で話してポジショニングを変えられるので個人的にはやりやすいです。その分、ちゃんとみんなで意識を合わせていかないと崩れる面も出てくると思いますが、そういうこともすべて理解している(阪口)萌乃さんが一つ前にいるというのもチーム的には、イレギュラーが起きたときに修正しやすいです。
—今シーズン、自分の強みを出せる手応えは?
復帰した直後はCB、途中からボランチをやりましたが、久しぶり過ぎて感覚が戻りきっていませんでした。今シーズンはそこの感覚が戻ってきているので、周りのポジショニングを見ながら合わせていければ、と思っています。今いちばんしっくり来るのは攻撃が出来るので、アンカーかボランチですね。
—カップ戦では課題も出ました。
フォーメ―ションやポジションが変わったときの守備の仕方に課題が残りました。個人個人で考えていることはあるんですけど、紅白戦でも、そこがうまくいかないことがあったので、それをどう声をかけて守備するか、が大事になってきます。
—声がけのところは、ピッチを離れていた頃から気にかけてましたよね。
後ろはアリ(有吉佐織)さんやサメ(鮫島彩)さんがチーム全体として声をかけることは出来る。この人が右を切れていたら、タテにしか相手が来なかったからもう一つハメることができたとか・・・細かい話をすることが少なかった。自分がアンカーに入ったときはアリさん、サメさんともですけど、一緒にCBをしていたのでルカ(乗松瑠華)さんとそこは話すようにしてます。あとは前のイノ(井上綾香)さん。最初のディフェンスの置き方がポイントになってくると思います。今までもそこの置き方について、話しをすることで変わってきた。新しく選手が投入されてきたときに守備が崩壊しないように、声掛けは練習中も意識してやっています。
—一つ前に上がるとやっぱりその声がけにも違いが出ますか?
出ますね。これまでも声はかけていましたが、どうしても1テンポずれることも多かったんです。ファーストディフェンスは重要ですし、そこがハマれば大きく崩れることはないと思っています。
—今シーズン加入し船木里奈選手はマイ仙台時代のチームメイトですよね。
里奈が入ってきたことによって攻撃のスピードが上がりましたよね。FWとか前線にボールが入っても仕掛けられる人が少なかったので、彼女が入り攻撃のスイッチが入るのが大きい。あとアクションを起こしてくれるので1人目をオトリに使って、2人目3人目が使える。自分がアンカーに入ったら一個飛ばしのスルーパスもある。逆に裏に抜けさせて落ちたところの中の崩しもあるし、もっと攻撃の形が増えるんじゃないかな。
—リハビリが順調に進んで、想定よりも早い復帰となりましたが、その期間含めて、新しい強みは見出せましたか?
VENTUSでまた中盤やることになって、そのタイミングでの身体の向きだったり、わざと半テンポで出したり、FWの裏抜けに合わせたパスのタイミング、そのときの時間の作り方は新たに吸収したことです。
—リズムを変える——そういう動きは今のVENTUSの試合でよく見られますよね。
3シーズン目に入って少しずつ出てきた変化だと思います。感じるのはやっぱりサッカーをよく観て学ばないといけないということ。VENTUSはアリさんをはじめ、よくサッカーを“知ってる”、“観てる”人が多いので、話をしても理解が早いし、深く話せるんです。例えば、映像をよく観ている人は頭の中にあるイメージの容量が多いから、すぐにつながる。映像を観ない人はその場面の説明を結構細かく説明しないといけない。それでも共有できてるかはわからないじゃないですか。
—“サッカーを知る”、そこから初めて発展させていくことができる、ということですね。
そこは最低限のところとしてプロサッカーリーグでプレーする選手は持っていないといけないと思うんです。
—西澤選手は24歳。VENTUSでは若手とも中堅とも言えますが、そういう発信はチーム内でもどんどんしていきたいですね。
そう思っています。(杉澤)海星もそういうタイプなので、その辺りを巻き込んでイメージをどんどんみんなで共有できるようにしていきたいです。
—ケガ明け、NACKでプレーしたときのことは覚えてますか?
外から観ていてもスタンドと近いというのは感じてましたが、実際にピッチに立ってみると全然違いました。迫力がすごかった!普通にプレーしていて客席の様子が目に入ってくるんです。だから一つひとつのプレーでも観てる人たちが沸いてるのかどうかわかりやすくて。それはやっててすごく楽しいところです。初年度って1試合の入場者数、3000人とか超えてましたよね?
―WEリーグ目標の5000人入ると、きっとまた違う雰囲気になるはずです。そうなるように西澤選手はどんなプレーを見せてくれますか?
個人の目標は・・・スタメンを勝ち取って、コンスタントに出場する!これは当然のラインです。そこにプラスして、チームとして3位を獲れるように、チーム力、コミュニケーション力を上げていきたいです。
—具体的には?
得点・・・?
—何故か疑問形ではありますが(笑)アシストという答えかと思っていたので、意外でした。
したいです、得点!アシストはもちろんですけど、セットプレーもありますし、ミドルシュートも。シュート練習はやっています!あとは入れるだけ(笑)。
—強烈なミドル、お待ちしてます。
はい!背番号にちなんで多めに7ゴール設定にしようかな(笑)。今、チームとしても面白いサッカーが出来るぞっていうのを感じてます。せっかくホームがNACKなんですから、ゴールしたら全角度でパフォーマンスやってみたいです。そうすれば、来てくれたみなさんと一緒に沸ける!観ている人がもっと楽しめるような、NACKが沸くようなサッカーを発信できるようにがんばります!
早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。