キャリアサポート特集第3弾で登場するのは、今村南海 選手(ニッポンレンタカー北関東株式会社)、坂井優紀 選手(株式会社志村)です。GKの末っ子として、日々鍛錬中の今村選手は職場でも、そのにこやかな表情と俊敏さをフル稼働させていました。坂井選手も同様。彼女ならではの心遣いや一所懸命なところが、社内を明るく照らしているようでした。ピッチで発する闘志を感謝に代えながら、そしてそれぞれのキャラクターもしっかり発揮しつつ仕事に向き合っていることが、同僚のみなさんの言葉からも伝わってきました。
「一つ一つの業務を丁寧に」今村南海(ニッポンレンタカー北関東株式会社)
—今村選手がお世話になって約2年半ということですが、最初の彼女の印象は?
志木営業所 所長 渡邊一弘(以下、敬称略) 最初から元気でとてもアスリートっぽかったですね(笑)
今村南海 最初からアスリートっぽく入りましたので(笑)
—業務内容を教えてもらえますか?
今村 主にレンタカー業務です。電話対応から、貸し出す車を駐車場から運んだり、洗車をしたりしています。
—以前は恐る恐るだった車庫入れに自信がついてきたと話してましたよね。
今村 はい(笑)随分うまくなりましたよね?
渡邊 それはもう(笑)!特につきっきりで教えることはなくて、とにかく数をこなして成長してもらうしかないものなのですが、彼女は真面目でとにかく一生懸命取り組んでくれてます。
—同僚の根本咲彩さんから見て、今村選手の働きっぷりはいかがですか?
根本 彼女は同世代なんですけど、本当にしっかりしていて、ハキハキ話すし、あっという間に営業所に馴染んでました(笑)
渡邊 最近は言われるのを待つのではなく、自分で判断して率先して動いてくれるので、そこは非常に助かってます。
今村 まだ全然できてないんですけど…ひたすら業務内容を丁寧に行っている感じなので、成長したというほどのことではなく、慣れてきたんだと思います。
—慣れることも大事なことですよね…あれ?後ろの壁に張ってあるのは田嶋みのり選手のサインでは!?
今村 よく見つけましたね(笑)。彼女はマネージャーの一推し選手なんですよ!
—嬉しい情報ですね(笑)確かに営業所の中は、今村選手のほぼ等身大ののぼりや、VENTUSのグッズで溢れてます。
根本 あれらは実際に私たちがスタジアムに試合を見に行った際に、ガチャガチャを何度も回してゲットしたものなんです。一人、5,6回は回したんじゃないかな。
渡邊 なかなか当たらないんですよ、今村さんが(笑)。まさかのレアキャラで…
染谷雄太 営業推進部 営業企画課 次長(以下、敬称略) そういう意味では、本社の方でもみんなで試合を観に行くようになりました。昨シーズンは営業所のみんなが観に行くことを知らずに、本社の方からも5,6人で見に行ってスタジアムで会ったよね?あの日はスタジアムに向かっている途中でサイトから今村さんがスタメンだっていう情報が入ってきて、大騒ぎでした(笑)
今村 すごく叫んでくれていたので気づきましたよ(笑)
渡邊 自分はサッカーを観ていなかったのですが、実際にスタジアムでプレーしている今村さんは営業所で見る今村さんとは別人で・・・やはり日頃一緒に仕事をしてる人がピッチでプレーしているのを観ると盛りあがりますね。
根本 ホントカッコよかった!いつもよりさらにキビキビとしてました。
—キャリアサポートのきっかけについてはご存じですか?
染谷 もともと当社は地域社会の活性化に向けて、地域に根ざしたスポーツチーム・スポーツイベントへの支援活動に取り組んでいました。大宮アルディージャさんとのお付き合いは2019年にクラブパートナーになったところからです。その中でVENTUSが創設されて、キャリアサポートシップ制度というものを知りました。これまでも女性アスリートの皆さんが働きながら競技をしているということはテレビなどで目にすることもありました。女性アスリートを取り巻く厳しい環境を少しでもサポートできればと2021年よりキャリアサポートシップパートナーになりました。
—女性アスリートが近くで働いていることで、変化は感じられますか?
染谷 月曜になると週末の試合が共通話題として上がりますね。当然今村さんの出場についても(笑)。ワンフロアで4つほど部署があるんですけど、部を超えて話に上がります。実際にスタジアムに観に行く人も増えましたし、私はそのチケット手配の担当もしているので、コミュニケーションの幅は確実に広がりました。こうした取材の際にも感じるのは今村さんの受け答えがとてもしっかりしていること。同世代の新卒生とも多く接しますが、ここまで話すことができる人はいませんね。
—接客にも向いていたりするかも…?
今村 嫌いではないです!
渡邊 そう?じゃ、今度トライしてみましょう!親しみやすいキャラクターだし、実際にお客さまと接してみるのもいいですよね。
—スタジアムに観に来てくれるお客さまもいるかもしれないですしね。
渡邊 ウチは全国展開してますし、ニッポンレンタカーの従業員がNACK5スタジアムに観に行くかは、今村さんの活躍にかかってますから(笑)
今村 VENTUSの試合のときにスタジアムでコラボイベントができたら楽しそう!お仕事体験とかやってみたい!でも、まずは試合に出て活躍して職場の方にもっと試合に来てもらえるように頑張ります!
「人間関係は自分がどう行動するかで決まると思うんです」坂井優紀(株式会社 志村)
—実際にアスリートを受け入れには、やはり決断が必要だと思うのですが。
高橋秀明 代表取締役社長(以下、敬称略) 2020年の3月くらいに初めてキャリアサポートの話を聞いて、我々としても初めてのことでどんなことができるかわからないですけど、選手が働かないといけないことも理解できましたし、まずは一度やってみましょうということになりました。
—現在、坂井優紀 選手を雇用されています。
高橋 本当に坂井さんは人間性が素晴らしいです。爽やかですし。
坂井優紀 これ!こちらにお世話になるようになって、皆さんが一番言ってくださるのがこの“爽やか”なんです(笑)。本当にこれまで言われたことがない!
高橋 そう?笑顔もいいですし、声が大きい!
坂井 声(笑)!そこだけは守ってます。特に爽やかさを売りにしようと思ったわけではないのですが、新たな魅力を引っ張り出してもらいました(笑)。
—坂井選手の仕事ぶりはいかがですか?
高橋 彼女の業務内容としては車検のお客様に、事前にお知らせする電話対応をしてもらっているのですが、今まではコールセンターに外注していたんです。それを坂井さんにやってもらっています。コールするのは実際に顔を見て話すことができないので難しいところがあるのですが、坂井さんの対応は非常に評判がいいんです。
坂井 まだこの業務に入って4か月くらいなので、毎回毎回緊張しながら電話をかけてます。特に相手の方の最初の声のトーンは気にするようにしていますね。一度不信感を持たれてしまったら、すべての話を受け入れてもらえないので、敵対心を持たれないように徐々に自分の声のトーンも上げていく感じです(苦笑)。
高橋 それが、決して機械的ではないんですよ。坂井さんは…気合が入っているというか、なんとかウチに来てほしいという想いが強い(笑)。
坂井 どうにかウチに!っていう圧が勝ってしまっているとは思うんですけど、そこはやり過ぎないように(笑)。
高橋 当初、想定していたよりもよくやってくれてますね。他の店舗のぶんも請け負ってますし、彼女のコールから予約につながっています。
—坂井選手は宗岡のガソリンスタンド店舗内で業務にあたっていますが、VENTUSの選手だとわかるお客さまもいらっしゃるんですか?
坂井 通常はカウンターの奥にいるのですが、ときどきカウンターを出て対応もさせてもらうこともあるので、宗岡の店舗に来られたお客様はわかることもあると思います。
高橋 逆に坂井選手だとわかってもらうのもいいかもしれないですね。何か考えようか!
坂井 胸のあたりに「私が電話をかけました!」みたいなバッジをつけるとか?車検受付担当!みたいな。で、うしろを向いたらVENTUSって書いてあるのもいいですね(笑)。
高橋 お客さまの中にはアルディージャファンの方も多いんですよ。
—坂井選手は働くことと、サッカーを両立させていますが、社会に身を置く重要性を感じることもあるのでは?
坂井 サッカーにおけるプロフェッショナルな部分もわかるからこそ、というのはありますね。電話対応をしているとお客さまの顔が見えないぶん、うまく伝わらないままにひどくこじれてしまうこともありました。落ち込みますが、それもなかなかできる経験じゃないなって思うんです。特に職場での人間関係は自分がどう行動するかで、会社の方々が自分にどう向き合ってくださるか決まる。だから自分ももっと会社のために何かできないかなって考えになります。そういう姿勢は大事なことだなって感じます。
高橋 坂井さんのこういうところがとても好感を持てるんです。出勤、退勤の際にも必ず別棟にいる私たちの部屋まで上がってきて声掛けをしてくれるんです。ただ、サッカーとの両立は十分大変だと思うので、あまり無理はさせないようにとは思ってます。
坂井 もうめちゃくちゃ考えていただいてますよ!先日、神戸で試合があった際も…
高橋 翌日のお昼にこっちに戻ってきて、そのまま働くと聞いたので、さすがに休むように伝えました(笑)
坂井 あの日は本当にありがたかったです!社長直々にメールをくださったんです。だから仕事もサッカーもがんばろう!って思います。
—お話を聞いていると、一人の人間の“坂井優紀”としても十分にパワーを発揮していることが伝わってきます。またそこに“VENTUSの坂井優紀”が加わることでプラスになるといいですね。
坂井 先日、灯油を購入された年配の方の対応をさせてもらっていたときに、「今度、友達もつれてくるからね!」と言っていただいたことがすごく嬉しかったんですよね。こんなふうに、VENTUSのことを知っていってもらえたらいいなって思ったんです。来ていただいた人に私を通してVENTUSのことを知ってもらうのもいいんじゃないかなって。車検対応を対面でさせてもらう際にはサイングッズなんかをお渡しするのもいいかな~とかいろいろ思いを募らせているところです(笑)。まだまだですが、私にできることを一つずつ増やしていければと思っています。
早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。