「スポーツ×栄養 学校給食でのVENTUSナポリタン」

VENTUSの選手たちが考案したアスリート食「VENTUSナポリタン」を、35()にさいたま市立宮前中・大宮西中の給食メニューとして提供していただきました。今回は、試作段階から給食提供までの選手たちの様子を少し掘り下げながらお伝えします。


Vol.51 文・写真=早草 紀子

スポーツ庁地域版SOIP「スポーツ×栄養 学校給食でのVENTUSナポリタン」企画は昨秋からスタートしました。大宮名物のナポリタンをベースに、アスリートならではのオリジナリティをどう落とし込むか、が肝でした。考案メンバーである望月ありさ 選手、五嶋京香 選手、阪口萌乃 選手、村上真帆 選手がアイディアをどんどん出していきます。

「サッカーでは集中力とかエネルギーが必要。自分はGKなのでスタミナよりも集中力を重視しているのですが、これはFPにも必要なところです。同時に学校で食べて集中力を高めることは中学生とも共通していると思ったので、そのための材料を入れました」と教えてくれたのは望月選手です。

オレンジキューブの食堂で行われた事前の試食会時には、望月選手、五嶋選手、阪口選手が実際に調理場に入りました。3人とも調理に関してはお手のもの。本格的な長包丁を使用して玉ねぎをスライスするときには「慣れないから怖い!」と言いつつも、さまざまな試作品(20人前)を、大鍋を使いながら難なく仕上げていったところはさすが!



「ナポリタンから副菜のサラダ、デザートまですべてアルディージャカラーのオレンジで統一しているのもこだわりです!」と阪口選手から食材カラーの意図も伝えられました。実際の給食時には、デザートが変更になりましたが、白玉にオレンジゼリーとパイン、みかんが加わり、こだわりの“アルディージャカラー”はしっかりと反映されていました。

「食材には五大栄養素すべてが入っていて、アスリート食らしさを保ちつつ、冷めてもおいしく食べられて、給仕する生徒さんたちが作業しやすくするために、固まらないようクリーム仕立てにしました」とは五嶋選手。栄養素を踏まえながら、ナポリタンに合う食材選びだけでなく、給仕段階まで考慮するきめ細やかな配慮を感じました。

「うどんがナポリタンに合うとは思わなかった」「かぼちゃサラダにツナが入っていてバランスがよかった」「あらゆる食材の組み合わせにハッとさせられた」と、各中学校の校長先生、管理教諭のみなさんをはじめ、オリジナリティあふれるVENTUSナポリタン試作は上々の反響でした。



選手たちのアイディアをもとに10回以上の試作を繰り返しながらレシピ化してくださったのが、eatas株式会社 代表取締役CEOであり、管理栄養士の手嶋英津子 さんです。

「選手のみなさんから具体的な食材が出てきたときすごく驚いたんです。糖質をエネルギーに変えるために豚肉がいい、それをさらに活性化させるためにニンニク、女性アスリートに多い貧血などに効果のあるホウレンソウなど、全部の食材の栄養素がつながっていました」(手嶋さん)

日頃からアスリート食を自炊する彼女たちにとっては、栄養素は馴染み深いものなのでしょう。今回はその知識がフル活用されたようです。

手嶋さんが最も頭を悩ませたのは“給食”特有の制限でした。

「給食においては美味しいだけでなく、設定された栄養分があり、その中でやりくりしなければなりません。クリームも入れ過ぎると脂質が上がってしまう、カボチャにもマヨネーズ、ナポリタンにバターを使用しているので、脂質面のバランスが難しかったです。クリームもアレルギー対応のものを使用し、かぼちゃサラダのマヨネーズは当初の半分の量に抑えました」(手嶋さん)

そしていよいよ給食当日。望月選手、阪口選手は大宮西中学校へ、五嶋選手、村上選手は宮前中学校へ向かいました。宮前中学校ではコロナ禍の事情もあり、これまで給食はそれぞれの机で取っていたそうです。けれど、この企画を機に初めてグループごとで食べることに。



五嶋選手、村上選手もそれぞれグループに入れてもらっての給食タイムです。「VENTUSナポリタンが一番のお気に入り!」「クリーミーでビックリした」「かぼちゃサラダお代わりします!」と生徒さんたちの反応も嬉しい限り。村上選手はおしゃべりが弾み過ぎて、気が付けば食べ終わっていないのは村上選手だけ。最後は大急ぎで給食をたいらげていました。

そんな村上選手が楽しそうに振り返ります。「みんな元気でたくさん話しかけてくれたのでホッとしてます()。私も小学校以来の給食で楽しかったです!ナポリタンとうどんを掛け合わせたり、クリーミーさを出したナポリタンを食べたことがなかったので、そのアイディアもよかったし、何より美味しかったです。やっぱりうどんって主食でエネルギーになるので、VENTUSナポリタンを食べてしっかりエネルギーを蓄えて、VENTUSを応援していただけると嬉しいです!」(村上選手)



本格的に中学校へ今回の企画を打診したのは11月。本来であれば、このスピード感での給食提供は難しい中、両校のみなさんのご協力によってなんとか給食当日を迎えることが出来ました。「最初にこの企画のお話を聞いたときから、不安要素はまったくなくて、ぜひ実現させたいと思いました。うどんを本来と別ルートで仕入れないといけなかったりはしましたけど、こういう取り組みは継続していけるといいなと思います。実際に選手の方に来ていただいたことで、生徒たちも表情も明るかったですし、実際にサッカーをやっている生徒たちにとっても励みになったと思います」と話してくれたのは、あらゆる調整をしていただいた宮前中学の渡部智昭校長先生です。

この経験はVENTUSにとっても大きな一歩です。継続していくことでさらに地域貢献が深まっていくことを実感した企画となりました。


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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