MF41 小野雅史【マンスリープレーヤーインタビュー】


東京V戦で外した心の制限

 小野雅史の2021シーズンは、悔しさを噛み締めながらのスタートとなった。開幕から4試合は、出場がなかったのである。

 「メンバーから外れて、ホントに悔しかったです。あの試合でやってやろうという気持ちは、誰よりも強かったと思います」

 シーズン初出場となったあの試合──第5節のV・ファーレン長崎戦に先発すると、32分に小島幹敏のチーム2点目をアシストした。2-0で迎えた54分には、シーズン初得点をマークする。ハスカことネルミン・ハスキッチのシュートをGKが弾くと、迷わず左足を振り抜いてゴールネットを揺らした。


 
 「得点はハスカが打ったあとにこぼれてきて、バウンドが難しかったかもしれないですけど、思い切っていきました。試合に出ていなかった期間にずっと継続してやった結果が長崎戦に出たので、そこはブレずにやれていたからというか、成長したところが出せたかなと思います」

 この長崎戦をきっかけに、スタメンに定着する。ボランチではなく2列目を定位置に第15節まで11試合連続で先発し、7試合にフル出場してきた。

 第11節の東京ヴェルディ戦、第13節のザスパクサツ群馬戦では得点も決めた。東京V相手にテクニカルな左足シュートを決め、群馬戦では豪快なミドルを叩き込んだ。

 
 「ヴェルディ戦の得点は全て思いどおりにいった、理想的なゴールでした。群馬戦はああいうところから打つ自信が出てきたので、あれは決められる自信があったので打ちました」

 自信の芽生えは東京V戦にあった。77分にミドルレンジから左足を振り抜き、相手GKを襲った一撃が、小野の心にスイッチを入れた。

 「得点にはならなかったけれどいい感じで当たって。それまでは自分で制限をして、ここはパスだろうと思っていたところがあったんですけど、遠目からでも足を振ろうとか、ゴールへの意識が強くなっていて。遠くからでも枠に持っていけるという自信が、生まれていたんです」

 自身のプレーにレベルアップを感じつつも、チームは苦しい日々を過ごしていく。2度の3連敗と6度の1点差負けを喫し、第6節から第15節まで10試合連続で勝利から遠ざかってしまった。

 「完敗した試合はほとんどなくて、自分たちのなかでもできることがゲームをするごとに増えたり、プレーの幅が拡がったりしていました。自分自身もコンスタントに試合に出て結果が出るようになってきて、自信もついてきて良くなっていると思っていたので。ただやっぱり、ホントにちょっとしたところなんですけど、そのちょっとしたミスとか、集中力を欠いたりとか、目に見えて分かるのはセットプレーとか、そういうところでの失点が多くて、もったいないゲームがほとんどだったので。でも、そこに関しては改善できると思うので、毎試合そういう気持ちでやっていたんですけど、断ち切ることができなかった。自分たちはまだまだ弱いなと思います」


責任はピッチで果たす

 クラブは5月25日に、岩瀬健監督と西脇徹也フットボール本部長の解任を発表した。佐々木則夫トータルアドバイザーが暫定的に指揮を執ることで、再出発をはかることとなった。

 「決められるところで外しているようでは勝てない。逆にちょっとしたミスで失点するようでは勝てない。第15節のギラヴァンツ北九州戦は、いまのチームの現状が出たようなゲームでした。そこはホントに悔しいです。監督が交代することは、勝負の世界ですし、そういうことがあってもおかしくないと思ってはいます。健さんと西脇さんが解任になって、責任を取ったのはお二人かもしれないですけど、最終的に選手の責任でもある。そこは深く受け止めています」



 そうなのだ。監督交代はカンフル剤に成り得るが、勝利を引き寄せるのは誰でもない選手たちだ。ピッチで戦う者こそが、勝利をつかむ当事者なのである。

 「自分たちのクラブのあるべき姿として、J1にいくチームだと思いますし、こうやって悩んでいるチームじゃないと思う。自分もJ1にいる大宮を小さい頃から見てきたので、そういう姿を取り戻せるようにやっていきたい」

 高木琢也監督の下で出場機会を増やした昨シーズンは、「ケガ人が多いから使ってもらっている」と控え目に話していた。しかし今シーズンは、勝敗を背負う意識が高まっている。

 「少しずつですけれど、自分がチームを勝たせると考えることができて、引っ張らなきゃいけないという責任感は、去年より明らかに強くなっています」

 アカデミー育ちの自覚と責任も強い。

 「クラブに対する思いとか、チームを勝たせなければいけない気持ちは、僕だけじゃなくアカデミー出身の選手は強いと思う。試合に出ている人数も多いので、こうやってチームが勝てていないと『アカデミー出身の選手じゃなくてもいいだろう』とか、そういうふうにとらえる人もいると思うんです。自分たちを認めてもらうじゃないですけど、アカデミー出身の選手がいないといけない、と思ってもらえるようなプレーをしたいと、ずっと思っています」

 佐々木監督とともにリスタートを切った5月29日のジェフユナイテッド市原・千葉戦は、0-2に終わった。小野はフル出場したが、11試合連続で勝利から遠ざかり、21位となっている。

 「まずはホントに、一つの勝ちにこだわりたい。ホントに次の試合に勝つために全力を出し切りたい。次の試合に勝って、チームを変えるきっかけにしたいんです」

 苦しい状況は続くが、小野は視線を落とさない。自分の力でチームを好転させるために、対戦相手に立ち向かっていく。




 

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