【聞きたい放題】番記者座談会 後編

デジタルバモス恒例企画となったクラブOBの渡邉大剛さん、MCタツさん(リモート参戦)、エルゴラッソの須賀大輔記者による番記者座談会を開催! 後編では今季の戦力をポジション別に分析していただきました。
※3名の意見は、クラブの公式見解ではありません。



ハイレベルな正GK争い

須賀:話題が多岐に渡った前編とは対照的に、後編は今季の大宮にフォーカスしていければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。昨季と同じくポジション別に顔ぶれを見ていきたいのですが、GK陣はどのような印象でしょうか。

大剛:本当に横一線だと思います。カサ(笠原昂史)が帰ってきて、南(雄太)さんも復帰して、昨季のレギュラーである志村(滉)くんがいる。あくまでも主観だけど、志村くんが1歩リードしていて、2番手をカサと南さんで争う感じかなと思っています。

タツ:予想が一番難しいポジションだと思いますけど、キャンプでの浦和レッズ戦を見ると去年の実績を含めて志村選手が一歩前に出ているかなと思います。ただ、その次の水戸ホーリーホック戦で南選手が復帰して、内容がめちゃめちゃ良かった。アキレス腱を切って以来、初の実戦だったけど、そうとは思えないくらいのパフォーマンスで驚きました。南選手のキャリアやレベルになるとブランクは関係ないんだと思う。ハイレベルなポジション争いだと思いますね。逆に(若林)学歩選手“推し”の僕の立場からすると、今季はケガもあって開幕スタメンは難しいかなと……。南選手の開幕スタメンもあるかもしれないですね。

須賀:僕は志村選手と南選手の実力を理解した上で笠原選手に期待しています。手足の長さやシュートストップ力は一番だと思っていてキック力もある。相馬スタイルには合っていると思うので、昨季の状況がウソのようなハイレベルな争いが見られそうですね。

タツ:そうだね。高い競争があれば学歩も伸びると思う。3月にU-20W杯の最終予選があってそこには選ばれて欲しいから、トレーニングマッチでは使ってほしい。育成型クラブを目指すなら年代別代表に選手を輩出するのも一つの形だと思うので、そのアピールのためにもリーグ戦で1試合くらいはスタメンで起用してほしいです。

左SBにハマるのは誰?

須賀:最終ラインはどうでしょうか。センターバック(以下CB)が充実している一方で、サイドバック(以下SB)はやはり不安です。

タツ:キャンプを見ると、左SBは茂木(力也)選手と高柳(郁弥)選手がやっていましたね。原(博実)さんはコンバートも一つの案だと言っていて、実際、高柳選手はコンバートになるからね。あと、個人的にはCBタイプの選手を入れてしまうのもありかなと思っていて、袴田選手と浦上選手のCBコンビに新里選手も加えて、攻撃時は右肩上がりの4バックはどうかなと思っています。

須賀:攻撃時に岡庭選手がガンガン上がって、後ろは3枚で作る形ですね。

大剛:僕も右SBが岡庭くんで、CBは浦上くんと袴田くんと考えていたけど、左SBは誰なんだろうと思っていて、いまのタツさんの話を聞いた上で、左に袴田くんを出して真ん中を浦上くんと新里くんでやるのはいいと思いました。普通に考えれば、左SBに茂木くんや高柳くんを入れる形になると思うけど、選手の能力やバランスを考えれば前者は面白そうですよね。

須賀:“左SB問題”はこの座談会企画が始まってから、ずっと議論していますね……。今回、高柳選手のコンバートの話は、前例として小野雅史選手(モンテディオ山形)がいるけど、それで本当にいいのかなと。小野選手が左SBをやって良かった面もたくさんあったけれど、小野選手自身が犠牲になってしまった部分は少なからずあると思っていて、大卒1年目の選手にその重責を任せていいんですかね。試合に出られるチャンスが広がるとポジティブに捉えられる一方で、難しい問題も多いと思います。

タツ:キャンプ中の練習試合で高柳選手はゴールを決めていたので、それを見ると本職の中盤で使ってあげたいなと。『試合に出るためなら――』という考えも悪くないけど、経験値を考えれば石川選手もできそうですし。

須賀:小野選手がコンバートされた流れとはちょっと違うじゃないですか。あのときは霜田正浩監督(現・松本山雅FC監督)のサッカーであの攻撃力を生かしたいというちゃんとした理由があって、納得できる部分もあったけど、今回は“いない誰かをあてがわないといけない”感が強い。選手たちからしても『なんで補強しないの?』となりますよね……。

大剛:左SBは希少なポジションだからどのチームも悩んでいるだろうけど、獲れなかったんでしょうね……。外国籍選手も選択肢としてはあるけれど、Jリーグでの経験のない選手を最終ラインにいれるのはリスクが高い。だから、この状況になってしまったのかなと思いますね。

タツ:日本全体で不足しているポジションで、いまの大宮のチーム状況を考えると獲得競争に勝つのは難しいですね……。

中盤はサイドハーフが焦点に

須賀:では、中盤のメンバーはどうですか。

タツ:育成型クラブを名乗るなら、若手を軸で使ってほしい思いは変わらないです。その意味では左サイドハーフで存在感を示している大澤朋也選手は推していきたいですね。同じポジションは泉澤(仁)選手が圧倒的ではあるけど、スタメンは大澤選手で引っ張って途中交代で泉澤選手が出てくる形はありかなと思います。対照的にボランチは人材が豊富で選択が悩ましい。栗本(広輝)選手や石川(俊輝)選手が入ればボールは動くし、“今季はこの人がやらないとダメでしょ枠”の小島(幹敏)選手。もちろん大山(啓輔)選手もいるからボランチの層は厚い。誰が出てもいいくらいですよ。

須賀:本当にそのとおりで、組み合わせでいろいろと変えられそうですね。右サイドハーフは柴山(昌也)選手が軸になりそうですかね。

タツ:そうですね。サイドハーフは柴山選手と大澤選手を軸にしてほしい。1~2試合悪い試合があっても我慢して使ってほしいですよね。

大剛:右は柴山くんでボランチの栗本くんと幹敏は堅いですね。左は誰かと考えたときに大澤くんがいいなら、アルビレックス新潟の小見(洋太)くんみたいなイメージですかね。高校まではFWだったけど、プロで左サイドに移って成長したと思う。FWからサイドハーフのコンバートは珍しいことではないけど、大澤くんは愛媛FCから戻ってきて今季が3年目。本当に勝負の年だろうからモチベーションはめちゃくちゃ高いと思います。彼が出続けることで育成型クラブにマッチするし、後輩たちの刺激にもなるでしょう。

須賀:大澤選手は明るいキャラクターを含め、起爆剤になってくれそうな雰囲気はありますよね。

タツ:あの明るさがいいですよね。あとは、右のサイドハーフでアンジェロッティ選手を使うのはありだと思っています。キャンプでは力を発揮し切れていないけど、ブラジル人選手は“開幕するとスゲエ現象”はしょっちゅうありますからね(笑)。

ただ、昨季の大宮は最後に何が一番良かったかというと、中野(誠也)選手と富山(貴光)選手の2トップの守備。切り替えがすごく速いから、チームとしてあそこから守備が始まる。アンジェロッティ選手がFWに入っても、あそこまでの守備はできないと思います。中野選手の守備は攻撃しているような感じのプレッシャーのかけ方ですからね。キャンプでもそれは見られていて、相手も嫌がっていました。あれを一人でやっても仕方ないけど、あそこに富山選手がしっかり付いていくから意味がある。あの2トップのプレスは相手にとってすごく脅威だと思います。そこから1列下がったところでアンジェロッティ選手が出て行けばまだ間に合う。ファーストプレスが遅れてしまうと全部が遅れてしまうから、その意味ではアンジェロッティ選手は2列目のほうが全体のプレスはハマりそうですよね。紅白戦を見てもその組み合わせはあったので、相馬監督のなかにもプランとしてはあると思っています。

大剛:アンジェロッティ選手が右に入るなら柴山くんと競争させたり、柴山くんを左に回したりするのも面白いですよね。

須賀:アンジェロッティ選手は使い方を含めてキーマンになりそうかなと思っています。柏レイソル時代の話を聞いても、ゴール前で待っているよりはボールを触りたがるタイプの選手らしいので、そう考えると2列目のほうが合っているかなと感じています。

タツ:本人は得点力が売りと言っているけど、練習ではあまりシュートが入っていないんだよね……。でも、さっきも言ったようにオフ明けのブラジル人は当てにならないからね(笑)。

中野選手のキャリアハイに期待

須賀:では最後にFWを見ていきましょう。ファーストセットは中野・富山コンビですかね。

タツ:中野・富山のファーストセットが決まっている上で、シーズンをかけてアンジェロッティ選手がFWをやるようになっていくと面白いと思います。切り替えがどれだけ身に付いていくかですが、真ん中にいるほうがゴールは増えると思うのでそこは期待したい。そうは言っても中野選手と富山選手の2トップは図抜けていて、特に中野選手は2トップの一角が一番ハマると思います。ケガなくやれるなら、今年こそキャリアハイを出してもらわないといけないですね。

須賀:まさにそのとおり。“今年こそ”なんですよ。みんな、3年間待っているんだから(笑)。

タツ:今までは、どのクラブでも本当に彼が生きる形で使われてこなかったと思うけど、今年はその形になっている気がします。

須賀:今年こそで言えば、僕は矢島輝一選手にはとても期待しているというか、信じていて、早くベストコンディションでプレーさせてあげたいですね。

大剛:トミ(富山)と誠也くんのコンビが鉄板だと僕も思います。前からの守備がチームの助けになる。FWなのでゴールは取ってほしいけど、いまのスタイル的にもチーム全体で守備から入る部分はあると思う。スタートはこの二人で、途中から河田(篤秀)くんが入ってくるとか、アンジェロッティ選手を切り札としてFWに入れるのは面白いと思います。輝一くんも戻って来れば高さの面では大きなオプションになりますね。

タツ:開幕戦を考えると、レノファ山口FCはつないでくるチームなので中野・富山の2トップで前から来られるのは絶対にイヤだと思います。

須賀:昨季のNACK5スタジアム大宮での試合は、まさにそのような展開で勝ちましたよね。

タツ:そうですね。だから開幕戦はこの組み合わせで間違いない。

あの天才肌の覚醒が見たい

須賀:ある程度、チームの輪郭や開幕スタメンは見えてきたと思います。それでは、最後にそれぞれの今季期待する選手を聞かせてください。

タツ:僕は中野選手の15ゴール。これは期待したい。あとは育成型クラブとして大澤選手がレギュラーに定着したら絶対に良いシーズンになってくると思います。

大剛:僕は柴山くんですね。昨季、すごく頑張っていたと思います。ほとんどの試合に絡んでアシストも多かったし、得点に絡むプレーも多かった。今季もちゃんと結果を出せれば海外挑戦も十分に見えてくると思います。昨季の疲労もあると思うけど、フィジカルベースを上げて、ケガなくシーズンを戦って、昨季以上の結果を残せればチームにとってプラスだし、(奥抜)侃志のようにステップアップの道筋を作ってもらえればいいと思いますね。

須賀:僕は小島選手です。本人は『特に理由はないですよ』と相変わらずだけど、背番号も7になって周囲の目は変わる。昨季は苦しんでいた時期もあったけど、最後はポジションを奪い返したし、もっとゴールが付いてくればスーパーな選手になると思っています。1年間、司令塔としてやってほしいですね。

タツ:本当にそうです。沖縄キャンプで取材したときも「今季はエースとして引っ張って行かないとダメじゃないですか」って突っ込んだら、「マジすかー」って冗談ぽく言っていたけど、表情はけっこう気合いが入っていて、背負う感じが伝わってきましたよ。

須賀:仲良しだった小野選手が移籍して少なからず思うことや刺激はあるだろうし、もしかしたら本人だって出ていく可能性があったかもしれない。でも、結果として大宮でプレーする。本当にみんなが期待していると思います。

大剛:もっとゴールを取れれば変わってくるでしょうね。まだ、シュートが弱くて、だいたいふかす……(笑)。幹敏のキックの質はどちらかというと、シュートよりもサイドチェンジとかパスに向いているから、どうしてもシュートのときも力が乗り切っていないことが多い。そこの力強さが付いてくれば雰囲気が出てくると思います。

須賀:大剛さんは、小島選手と一緒にやっていますか。

大剛:1年間やっていますよ。当時からフワッとしていて大丈夫かなと思っていました(笑)。ただ、技術はめちゃくちゃしっかりしていて、サッカーセンスも抜群だった。(高山)和真と幹敏がいて、メンタルは和真のほうがプロ向きだったけど、彼はマイペースにずっとやってきた。そのなかで、フィジカルも上がってきて、技術はつねにアップデートされているから成長はしていますよね。

須賀:本当に良い意味で言葉と顔が一致していないときが多いんですよ(笑)。

タツ:そう、めちゃくちゃ正直なところもあれば、お茶目なウソつきでもあるんですよ(笑)。だからこそ、期待ですね。

須賀:あーだこーだ言いつつも、もうすぐ開幕で、始まったらあっという間ですから、今季はシーズン中に緊急招集を受けないことを願います。ハラハラではなくワクワクのシーズンになっているといいですね。

大剛、タツ:それが何よりです(笑)。今日はありがとうございました!

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