【VENTUS PRESS】吉谷茜音 後編

初年度シーズンの途中からVENTUSに仲間入りした吉谷茜音 選手のWEリーグ初出場は昨シーズン第12節のノジマステラ相模原戦、NACK5スタジアム大宮でのプレーでした。少しずつ出場機会が増えて行く吉谷選手の左サイドからゴール前へ飛び出していく姿に高揚感を覚えた人も多いのではないでしょうか。その矢先のケガから現在まで、あますことなく話していただきました。


Vol.33 文・写真=早草 紀子

「一気に流れを変えて得点のゴールに向かうプレーを見せます!」(吉谷茜音)

VENTUSからオファーが届いたとき、WEリーグはすでに走り出してました。迷いはなかったんですか?
吉谷 
ちふれASエルフェン埼玉から移籍して一年間、一つ下のカテゴリーのなでしこリーグを経験しました。もう一度日本のトップリーグでプレーできることが素直に嬉しかったし、チャレンジしたい!と即決でした。

—練習参加を経ての入団ということでしたが、VENTUSの印象は?
吉谷 
縦に速いサッカーをする印象でした。経験のある祐実さん(上辻)、サメさん(鮫島彩)、アリさん(有吉佐織)、夢穂さん(阪口)がいる中でやれるかもしれないっていうのはすごくワクワクしました。

—吉谷選手は裏へ抜け出すプレーが真骨頂ですが、この能力はいつ頃開花したんですか?
吉谷 
エルフェンのときは元々ドリブルが好きで、自分で運ぶっていうプレーもあったんです。それよりもすごいうまいパサーに出会って、動き出しを意識するだけでゴールに近づけるっていうのに気づきました。それからです。 

—その上手いパサーとは当然・・・
吉谷 
祐実さんも入ってます!祐実さんがすごいのは、本当にいろんな種類のキックを持っていて、一つひとつのパスでもボールの回転が違ったり、左右どちらも蹴れるし、走り出せばもう思ったイメージどおりのボールが来るんです。でも試合前とかに「よし気合い入れてこう!」とかって言うじゃないですか。そしたら祐実さんに「気合なんか入れたもん負けやで。こわばって普段のプレーできへんで」って言われたんです。確かに、って納得しちゃいました。VENTUSに来てからはさらにそういうことが増えて、日々いろんな選手から学ばせてもらってます。

—そんな日々を送る中でご自身の中で変化はありましたか?
吉谷 
より自分に集中するということを意識するようになりました。どうしてもうまくいかないとき、試合に出れなかったりするときに、誰かのせいや他のせいにしてしまう部分があると思うんです。それを絶対しないようになりました。常に自分に集中して、自分ができること、自分らしさを忘れずにプレーし続けることっていうのを意識してます。その方が平和じゃないですか。

—出ました吉谷選手のモットー平和主義
吉谷 
自分の中で仲がいいのは絶対いいと思ってるんです。“仲良しこよし”って言葉もあるじゃないですか。自立した考え方や優れた技術を持ってる人たちは絶対仲が良い方が、プラスな空気を作れると思うし…なんか私すごい喋っちゃってません()?

—大丈夫です、これは吉谷選手がしゃべるって企画です()
吉谷 
あ、そっかじゃ続けます。負けてる試合っていうのは絶対プラスな空気を持っているチームの方が逆転できると思うんです。全員が人のせいにせずにプレーを続けていけたらいい方向に流れていくと思ってます。 

—ベクトルを自分に向けることは大事ですよね。
吉谷
  WEリーグっていうレベルの高いところでプレーするということは、出場機会がなかったり、悔しい思いをすることも多くなります。そういうとき、自分の気持ちをブラさないために、自分に集中する。そうすることで自分のやるべきことができたり、課題が見つけられたりしたので、そこを整理できるようになりました。

—そういう心境でWEリーグデビューをNACK5スタジアム大宮で迎えられたことは大きかったですか?
吉谷 
それはもうあのとき、スタジアムに多分4,000人くらい観客のみなさんがいて、アドレナリンが出てすごい嬉しかったのを憶えてるし楽しかったです。

—エルフェン時代もNACK5スタジアム大宮を使ってましたが、本拠地となると違うものですか?
吉谷 
確かにNACK5スタジアム大宮でプレーはしたことがありましたが、ホームという訳ではなかったので、全然違います。やっぱり“ホーム”を感じながらプレーできるって本当にすごいことなんです。しかも私はサイドのポジションなので観客席が近い見に来てくれた知り合いも「選手が近くていいね」って喜んでました。

—今シーズンに入ってからも調子が上がってきたなと思ったところにケガで離脱となりました。
吉谷 
そうなんですよ。昨シーズンのこともあったから、調子が上がってきた時期だからケガには気をつけようって思ってたのに・・・ボールに乗っちゃって縦に捻ってしまったんです。またか!って。治りも遅くて、正直焦りました。でも足首の状態はもうよくなって、あとはがんばるだけ。あと3節だけど、根本的には行きたいって気持ちはあります!

—この選手に目が行っちゃうんだよな、っていう選手っていますか?
吉谷 
あまりサッカーは見ないんですけど、同じポジションなので三笘薫選手は見てしまいます。ドリブルはもちろんですけど、動き出しとかもすごく上手い。相手を置き去りにするファーストタッチも・・・そういうところはぜひ真似したいなっていうのは常に思ってます。

VENTUSの三笘になりますか。
吉谷 
!?が、がんばります・・・

—今シーズンも残り3節となりました。VENTUSは現在4位につけてます。吉谷選手は途中で流れを変える役割を与えられることが濃厚ですよね。
吉谷 
今シーズンのVENTUSはボールを保持する時間が増えて、追加点が入り出すと流れに乗れる。ただボールが足元に集まり過ぎて、相手のプレッシャーが来てそれにハマってるしまう場面もある。もし自分が出たら1回相手コートに入ることで自分たちのベースにもって行けるように。相手を逆向きにするプレーを心がけたいです。 

—ぜひ、吉谷さんのプレーでワクワクさせてください。
吉谷 やっぱりファン・サポーターのみなさんはゴールに向かうプレーを待ってると思うんです。一気にリズムを変えて、得点の匂いがするプレーをみなさんにお見せできるようにがんばります!


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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