GK 35 南雄太【マンスリープレーヤーインタビュー】


豊富な経験をチームに還元

  ゆったりとした闘志、とでも言えばいいのだろうか。

 プロ24年目のシーズンを過ごす南雄太は、トレーニングからハードワークをしつつ、チーム全体に目配せをする。その言動は冷静かつ客観的でありながら、勝利への熱を感じさせる。彼がいるだけでチームは落ち着き、引き締まっていくのだ。

 「この時期の戦いには、いろいろなプレッシャーがあると思います。優勝争い、残留争い、各チームがいろいろなものを背負いながら戦う要素がより強くなる時期だと思いますが、そういうプレッシャーをネガティブにとらえるのではなく、逆に楽しめるようなチームが、最終的に目標を達成するのかなという気がします。自分はJ1・J2の入れ替え戦を戦ったこともありますが、その雰囲気はなかなか味わえるものではないですし、自分のキャリアで後々に生きてきたりとか、なかなか体験できるものではないので意外と楽しんでやるようにしてきました」

 大宮のチームメイトはどうだろう。プレッシャーに縛られることなく、試合に臨めているだろうか。南は静かに頷いた。

 「自分がこのチームに来た当初は、シモさん(霜田正浩監督)がやろうとしていることは見えましたけど、なかなか形にならなかったりとか、いい内容の試合をしても勝点につながらなかったりとか、そういったことがありました。いまは継続してきたことが結果に現われてきていますし、試合内容もまだまだパーフェクトではないですけれど、これだけチャンスを作れているのはすごくポジティブなのでは。見ている人も面白いんじゃないかなと思いますし、やっている自分たちもいまのサッカーに手応えとやりがいを感じています。やってきたことがだんだんと結果につながって、自信を持てるようになってきて、とてもいいサイクルなのかなと思います」

 ほかでもない南自身の存在も、チームの支えとなっている。8月9日の大宮デビューから第36節のジュビロ磐田戦まで、13試合連続でフルタイム出場を記録している。

 「横浜FCで試合に出ていた時期もありますが、20年にJ1へ上がってからはコンスタントに出続けるのが難しい時期もありました。こうして試合に絡めていること、それがまた新しいチームというのが、とても刺激的です。しかもアルディージャという大きなクラブでやらせていただいているのは、ホントに幸せなことだなと感じながら日々生活をしています」

 思いがけないめぐりあわせもあった。松本拓也GKコーチとの出会いである。

 松本GKコーチは柏で長く仕事をしており、16年リオ五輪と18年ロシアW杯で代表入りした中村航輔を育てた。自身の古巣である柏での仕事ぶりを聞いて、南は「一度教えてもらいたい」との思いを膨らませていた。

 「彼とは同級生で昔から知っていて、ドイツへ学びに行くなど、日本のGKコーチのなかでは異色のキャリアを持っています。話しているなかでもメソッドや視点はすごく面白いなと思っていましたし、柏の選手からもトレーニングは独特だと聞いていて、とても興味がありました。この年齢でも『あっ、まだ成長できるな』と感じさせてもらえる部分があるので、すごくありがたいですね」


プレッシャーとの対峙

 ピッチに立つ充実感は大きい。同時に、勝敗に対する責任感、自らの立場への危機感も胸に刻む。

 「GKはとてもデリケートなポジションだと思いますし、ワンプレーでポジティブにもネガティブにも評価が変わります。FWとGKはいろいろなものがとても見えやすいポジションなので、批判も称賛も味わってきました。それが面白みでもあるんですけどね」

 J1、J2の合計出場数は、実に「640」を超える。「それだけの数の試合に出られたのは、使ってくれた監督やGKコーチ、いろいろな人の思いがあってのことです」と感謝の言葉を口にしつつ、ベテランならではの思いも吐露した。

 「35歳あたりからは、先を見ながらサッカーをしてきたわけではありません。だから、ホントに1試合、1試合が、自分にとっては重いんです」

 20代や30代前半では無関係だった「年齢」が、40歳を過ぎた選手には「評価基準」に加えられる。小さなミスが年齢と結びつけられ、シビアな評価が下される。南が「1試合の重み」を噛み締めているのは、彼にしか分からないプレッシャーと絶えず向き合っているからなのだろう。

 だからといって、悲壮感はない。「近年はすごくGKが注目されてきていますよね」と、うれしそうに話す。

 「自分たちが子どもの頃は、フィールドプレーヤーができない子どもがGKをやる、動けない子どもがやるみたいなイメージがありましたけれど、いまは少年サッカーを見てもGKはホントに上手ですし、自分がプロになった98年に比べるとものすごい進歩というか、日本のGKも良くなってきていると思います。それがすごくうれしいし、そういうものに少しでも携われているのであれば、自分がやってきたことは間違いじゃないなと思っています」

 勝負の11月について問われると、表情を引き締めた。

 「明暗を分ける月です。ここでの戦いが今シーズンを決めるし、それにプラスして来シーズンへの足がかりになる。ホントに大事な戦いになります。ホームではいい戦いができていて、結果もついてきていますので、自信を持って臨めている部分があります。重要な場面になるほどファン・サポーターの皆さんの力、スタジアムの力は大きいですので、ぜひこの大事な月を一緒に戦って乗り越えて、J1昇格ではないですけれど、J2残留という一つの目標を達成できるように頑張っていきます。ファン・サポーターの皆さんには、ぜひ後押しをしていただけたらと思います」

 背番号35を背負う守護神は、ありったけの思いをプレーに込めている。大宮の勝利に貢献するという、ただ一つの思いを。

 

 

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