GK1 笠原昂史【マンスリープレーヤーインタビュー】

力になれなかった悔しさ

11月21日に行われた明治安田J2第35節・FC町田ゼルビア戦で、笠原昂史は左腕に主将の腕章を巻いた。キャプテンの三門雄大、副キャプテンの大山啓補と河面旺成が欠場する中で、32歳の守護神はベンチ入りメンバーも含めて最年長だった。

「小学生で日替わりキャプテンをやって以来でした。もうそういう役割をする年齢になってきた、というのはもちろんあります。同時に、その重みや責任をすごく感じました」

笠原が胸に刻む「重みや責任」は、チームを代表してピッチに立つことを指し、アルディージャに関わる全ての人に勝利を届けるとの決意によって、揺らぎのないものとなっていく。それだけに、J1昇格の可能性が消えてしまった現状については、厳しい表情を浮かべる。

「J1に昇格する可能性がなくなってしまったことについては、応援してくださっている皆さんに本当に申し訳ないという思いがあります。自分たちもそこを目標にやってきたので、残念でなりません」

シーズンの入りは悪くなかった。2月の開幕戦に勝利し、6月末の再開後は3連勝を飾る。第5節、第6節は連敗を喫したもの、第11節までは6勝2分2敗で4位につけていた。この時点で首位から3位までのチームより、消化試合数は1つ少なかった。期待を抱かせる序盤戦だった。

ところが、第12節以降は勝点を思うように伸ばせない。ケガ人が続出したことが直接的な原因だろうが、急激かつ長期の失速は誰にとっても不可解と言えるだろう。笠原もしばらく考えたのちに、ゆっくりと語り出した。

「単純にJ2全体のレベルが上がったと思いますが、そうは言っても大宮にはクオリティーの高い選手がそろっているので、(昇格争いに絡んでいない)この順位にいるというのは僕自身も理解ができないところではあります。なぜか……。得点がなかなか奪えなかったり、失点がどうしても増えてしまったりと、チームとしての噛み合わせがうまくいかなったんじゃないかな、と僕は思います」

笠原自身も7月4日の第3節・ザスパクサツ群馬戦で、全治6週間の負傷を負ってしまった。ベンチ入りのメンバーとして戦列に戻ってきたのは9月20日の第20節・町田戦で、再びピッチに立ったのは10月10日の第25節・栃木SC戦だった。


「自分が離脱していなければ、『もしかしたら……』という気持ちはもちろんあります。チームに迷惑をかけてしまったし、チームが流れに乗っていくきっかけを自分が作れなかった。それが悔しいです」

復帰までに時間を要したのは、コロナ禍の影響もあった。中2日か中3日の連戦が続いたため、練習はリカバリーに軸足が置かれ、実戦形式のメニューが少なかったのだ。負傷者が絶えなかったことも重なり、チーム内でゲーム形式の練習をするのも難しかった。さらに、他チームとのトレーニングマッチが組めなかった。

「復帰していく過程でトレーニングマッチができないのは、もちろん難しさがあったと思います。同時に、監督やコーチもケガをした選手のパフォーマンスがどこまで戻っているのかを、判断しきれないところがあったと思います。僕自身はぶっつけ本番のような状態で試合に出ることになっても、今シーズンの状況では仕方がないだろうと考えていました」

シーズン中にチームを離れるのは2年連続である。「不甲斐ないとしか言いようがない」と、自らを責める。

「2年続けて2か月近く離脱しなければならなかった。本当にチームに迷惑をかけてしまった」

プロとしての矜持を見せる

栃木戦で復帰してからは、先発フル出場を続けている。第34節からは3試合連続で無敗を記録した。第34節・ツエーゲン金沢戦、第35節・町田戦は無失点だ。

「昇格の可能性がなくなってからも、練習ではそこまで落ち込んだところはなく、全員が前向きにトレーニングしています。感情をはっきりと表には出さないかもしれないですけれど、悔しい思いはみんなが持っていると思う。昇格の可能性がなくなってしまった悔しさを残りの試合に全てぶつけていけば、必ずいい結果につながると思います」

J1昇格は今シーズンの目標だったが、最終的な到達点ではない。J1へ復帰し、J1に定着し、タイトルを狙うことがクラブのターゲットだ。

だとすれば、J1昇格を逃したチームは、新たな目標へ向けていち早く動き出していくべきなのだろう。プロフェッショナルとしての矜持に照らしても、1試合も無駄にすることはできない。

「シーズン当初に掲げた目標がどうこうではなく、勝利を目指すのはプロとして当たり前です。スタジアムに見に来てくださっているファン・サポーターの皆さん、日頃から支援してくださっているスポンサーの皆さんに、『大宮は、まだまだこれだけできるんだぞ』というところを証明していかなければいけない。チームとして、個人としての価値を、少しでも高めないといけない。そういう試合をすることが、来シーズンにつながっていくと思います」

ファン・サポーターへの思いは尽きない。言葉があふれ出す。

「いつも応援してくださっているファン・サポーターの皆さんには、歯がゆさや悔しさを募らせてしまいました。スタジアムに来てくださったり、DAZNなどを通して支えてくださったりしているのは、試合を通して僕らも感じています。『こんなに勝てないチームは応援したくない』と思っている方がいてもおかしくないですが、それでもスタジアムに来て何とか選手をサポートしようという思いを、僕たちは絶対に無駄にしません。皆さんの活力になるようなプレーを見せなければいけないので、全勝するつもりでいい試合を見せていきます。スタジアムへ足を運んでいただくのはなかなか難しい状況だと思いますが、スタジアムで一緒に戦っていただければ僕たちの力になります。一人でも多くの人に来ていただけるような戦いを、最後まで見せていきたいと思います」

真っすぐな思いをプレーに込めて、背番号1はゴールを死守する。

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