MF41 小野雅史【マンスリープレーヤーインタビュー】


何よりも結果が欲しかった

リーグ戦再開後のプレーを見れば、8月のマンスリープレーヤー選出に異論はないだろう。再開初戦となった6月27日のジェフユナイテッド市原・千葉戦でプロ初先発を果たすと、1-0の勝利に結びつくプロ初ゴールをマークする。チーム内屈指の激戦区と言ってもいいボランチで、第7節終了時点で5試合に先発している。

「千葉戦は初めての先発で緊張感があり、無観客試合で独特の雰囲気もあったのですが、ああやって得点を決められたことで、その後は余裕が出ましたし、結果を示したかったのでほっとしました。チームの結果につながるプレーを見せたいということと、自分自身も次へつながる結果を出したかったので、うれしかったというよりほっとしました」

明治大学からプロ入りした昨シーズンは、J2リーグ戦の出場が2試合のみだった。どちらも途中出場で、プレータイムは25分である。気持ちが満たされるはずもなかった。

「大卒は即戦力として扱われると思いますし、去年は後輩で同期入団の吉永(昇偉)や、アカデミーでずっと一緒だった小島(幹敏)が活躍している姿を見て……彼らが頑張っているのは、もちろんうれしいんです。けれど自分自身も、もっとやれるんじゃないかという焦りがかなりありました。今年は結果を残さないと、という強い決意と覚悟を持って臨みました」

だからといって、何かを変えたわけではない。むしろ、昨シーズンからの積み重ねを大切にしてきた。

「2年目のシーズンを迎えるにあたって何かを変えたとかではなく、継続という意味で去年からやってきたことが今やっと噛み合ってきた、ということだと僕は思っています。さっきもお話ししたように焦りがあったので、結果を残さなきゃという気持ちはすごく強かったんですが、去年から練習で手を抜いたことはないですし、今シーズンも同じように取り組んでいますので」

自身と同じく明治大学にルーツを持つJリーガーの存在にも、向上心を掻き立てられている。アルディージャにも先輩OBの笠原昂史、山越康平、河面旺成がいるが、数多くの卒業生がJリーグでプレーしている。伝統ある明治大学で背番号10を背負ったことも、「明治出身の選手に負けられない」という気持ちにつながっている。

「大学のOBが相手チームにいたりして、試合が終わると挨拶にいくんですけど、それは刺激になっています。自分が試合に絡めていないときは焦りにつながったりしていましたが、明治っていう存在は僕の中で大きいですね」

ダブルボランチの一角として、攻守にたくましくプレーする。「大学時代は守備ばかりやっていましたし、守備は全然苦ではないです」と話し、「自分の特長は攻撃の部分なので、そこも見せていかないといけないです」と言葉に力を込める。

それだけに、第6節・ヴァンフォーレ甲府戦は悔しさが残った。ブロックを敷いてきた相手の守備を崩し切れず、0-1の敗戦を喫したのだった。

「今まで守備を中心にやってきて、ボール支配率で相手を下回ったけど勝ってきた。逆に栃木SC戦と甲府戦は、支配率で上回ったけど負けてしまった。ボールを保持したときのクオリティーを上げて、バリエーションを増やすことが必要だと思います。自分のプレーに関しては、もっとボールを受ける。そこから相手の背後へ動いてくれた選手をシンプルに使ったり、ミドルシュートの回数を増やしていったりしたい。僕自身が背後を突く動きも、もちろん必要だと感じています」


新たな気づきと変わらぬ危機感

継続的に試合に関わることで、たくさんの気づきを得ている。なによりも、充実感が違う。

「そうですね、去年と違って公式戦に出ていることで独特の疲労感を感じることができます。結果に対しても、素直に悔しがることができる。練習に臨むモチベーションも高くなります。去年が低かったわけではないですけど、試合に出て学ぶことの方が多いと思うので、毎日がすごく充実していると思います」

8月は7試合を消化する。蒸し暑い気候の中での連戦は、肉体的な負担が大きい。小野の表情が引き締まる。

「僕個人がどうこうというよりも、監督がいつも言っているように今シーズンは総力戦なので、全員が練習から高いモチベーションで同じ意識を持ってやることが重要だと思っています。その中で若手と言っては何ですけれど、自分たちがもっともっとチームの中心になって走れば他の選手の負担は減るでしょうし、もっともっと長い時間ピッチに立って、勝利に貢献するプレーを増やしていきたいです」

「チームの中心に」という言葉は、主力としての自覚の芽生えなのか。先発に定着している意識の表れなのか。「定着なんて、そんな気持ちは全然ないです」と、小野はきっぱりと否定した。

「ボランチは僕よりレベルが上の選手ばかりです。小島や(大山)啓輔くんは僕よりうまいですし、ミカさん(三門雄大)や(石川)俊輝くんなら僕より守備力がある。今はコンディションがいいから使われているととらえているので、練習から緊張感のあるいいマインドでやれています」

リモートマッチと名付けられた無観客試合を経て、Jリーグは上限を定めながら観客を迎え入れている。NACK5スタジアム大宮でのホームゲームも、第7節終了時点で3試合が開催されてきた。

小野の声が弾む。

「いやあ、メチャメチャ楽しいです! 声援をいただくのは難しい状況ですけれど、自分がググッてドリブルで持ち込んだだけでも拍手をしてくれて、そういう小さなことから応援が伝わってくるんです。『あっ、これはいいプレーになったんだ』というのが分かるので、すごく楽しいというか、やり甲斐があるというか。ファン・サポーターの皆さんの存在は本当に僕たちの力になってくれている、と実感しています」

勢いのある言葉は決して発しない。「出られるポジションで良いプレーをして、チームに必要とされる存在になりたい」と控え目に話す。しっかりと足元を見据える先に、さらに成長した自分がいると信じて。

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