今野浩喜の「タダのファン目線記」 盆栽美術館編②

今野さんが“タダのファン目線”でクラブ関係者らに逆取材を敢行するシリーズ企画から一転、迷走する雑談コーナーとなっている本連載。今回は、さいたま市大宮盆栽美術館編の後編です。じつは古くからの大宮アルディージャサポーターという副館長が選ぶ、渋過ぎるベストイレブンとは――。


きっかけは“担架要員”

今野「盆栽は一通り見たので、そろそろ、少し座ってお話しましょうか」

岩崎・齊藤「はい」

今野「岩崎さんは、大宮アルディージャが相当お好きだそうで」

岩崎「いやいや、ライトなファンですよ」

今野「……」

岩崎「酒飲みに行ってるだけです()

今野「でも、そういう家族的な雰囲気がありますよね。大宮には」

岩崎「確かに。子どもが小さいときには、おにぎりを何個も持って行ってましたね。バックスタンドに桜の樹があったじゃないですか、あのあたりが、いつもの場所で」

今野「えぇ」

岩崎「知らない人にも、おにぎりをふるまいながらビールを飲んでって感じでした」

今野「ほ~」

岩崎「試合は見ていませんでした()。……って、自分の話で大丈夫ですか?

今野「聞かせてください」

岩崎「もともとは、合併前の大宮市役所の職員だったんです」

今野「はい」

岩崎「市役所にサッカー部があって、あるとき、アルディージャの試合の担架要員として呼ばれたんです」

今野「タンカ?

岩崎「あの担架です担架。ケガ人を運ぶやつ」

今野「市役所の人がやることですか?

齊藤「スタッフがやるんじゃないんですね」

岩崎「当時はやりたい人がいなかったのかな。それで間近で試合を見たら、プロの掛け声とかボールを蹴る音とかすごいなぁって、その臨場感に心を奪われたのがきっかけですね。そこからスタジアムに通い始めました」

今野「なるほど」

岩崎「バルデスがいたころだから2000年代の頭かな、J1に上がるんじゃないかって期待が高まって、あのころは真面目に通っていましたね」

今野「最近は?

岩崎「去年の最終節、ザスパクサツ群馬戦には行きましたけど、やっぱりコロナの影響で足が遠のいちゃって……」

今野「あ~」

岩崎「今年は、またシーズンチケットを買いましたけど」

今野「まだ行ってはいない?

岩崎「そうですね。初戦はちょっと用事があって……」

今野「でも、相当前から見ているんですね」

岩崎「きっかけは担架でしたけど」

今野「ワケわかんないですね()

岩崎「はい」

今野「大宮市役所の方は、だいたい大宮アルディージャを応援していたんですか?

岩崎「いや、そういうわけでもないとは思いますが……」

今野(苦笑)。サッカーやっていたときのポジションは?

岩崎「センターフォワードでした」

今野「へ~」

岩崎「あまり上手じゃなかったんですけど、背が大きいから。その後、アルディージャがプロになって、J1に上がって。そうなると子どものほうが推しの選手ができちゃって」

今野「誰なんですか?

岩崎「森田浩史です!

今野「ホンモノだってわかる人選ですね」

岩崎「ロスタイム劇場もありましたし、さいたまダービーでの決勝ゴールもありました」

今野「お子さんは、まだ大宮が好きなんですか?」

岩崎「好きなんですけど、もう社会人になって新潟に行っちゃったんです」

今野「新潟を好きにはなってない??

岩崎「たぶん、大宮純愛なんだと思います」


副館長のシブイ人選

今野「じゃ、岩崎さんのベストイレブン聞いてもいいですか?

岩崎「うわぁ。最初のころは選手の名前も知らないで行ってたので……。でも、バルデスは外せないですよね。2001年にめちゃめちゃゴールを決めて昇格間違いなしって思ったのに、国際試合でケガしちゃって」

今野「パナマ代表でしたっけ?

岩崎「そうです! 今野さんもよくご存知で。あと、キーパーは江角浩司かな」

今野「はい……」

岩崎11人全員?

今野「もちろん!

岩崎「ディフェンダーで西村卓朗も好きだったな」

今野「ほ~」

岩崎「あとは奥野誠一郎とか。……ダメだね、50歳も過ぎると名前が出てこない」

今野「俺も最近、会話していて何も出ないときがある。携帯電話のせいだと思います」

齊藤「あははは……」

今野「わからないときは、すぐ携帯で調べちゃうから」

岩崎「そうですね。考えよう、思い出そうとしないですからね」

今野「じゃ、続きを」

岩崎「サイドバックは、和田拓也とか下平匠とか」

今野「下平はいい選手でしたね」

岩崎「ですよね。和田もポジションが決まってないような、右も左もできる選手でした。運動量が豊富で、ヤバイってときは逆サイドからでも戻ってきてくれて、草刈りのような鋭いスライディングでピンチを防いでくれた」

今野「確かに」

岩崎「ゴールを決めるときも、フレームの外から飛び込んでくるような感じでした」

今野「本人は、確かボランチがやりたかったんですよね」

岩崎「そうでした。いまも現役でしたっけ?

今野「やってますよね。今季から横浜FCでしたっけ?

岩崎「フォワードでは、横山聡が好きでしたね」

今野「これまで聞いたなかで、メンツが一番シブイですね()

岩崎「あっ、ディフェンダーでは冨田大介もよかった」

今野「おぉ~、シブイ!

岩崎「そう?

今野「えぇ」

岩崎「冨田は、すごくいい人。こっちはもう知り合いのつもりだから声を掛けたら、ものすごく優しかった。その印象が強いですね」

今野「そういうのが、いいんです」

岩崎「こうやって話していると徐々に思い出してくるね。あとはほら、全身ムチのようなフォワード……。ラファエル! 本当にしなやかで」

今野「でも、競り合いが苦手なんですよね()

岩崎「そういう意味では塚本泰史も忘れられない。あの京都戦の……」

今野「無回転フリーキックですね」

岩崎「あれはすごかった!

 

盆栽を育てるコツは?

今野「ところで齊藤さん、盆栽を始めるには何が必要なんですか?

齊藤「置ける場所さえあれば。道具は何でもいいんですよ、ご自宅にあるもので。盆栽を置くための場所、陽が当たって風が通る場所さえあれば大丈夫です」

今野「へ~」

齊藤「ベランダだったら、地面に直接置くのではなく、100円ショップで売ってるものでいいので、すのこの上に置くとか」

岩崎「私がここに来て初めて盆栽を買ったときは、ペットボトルの先につけてジョウロになるやつを用意しました。あとはバケツをひっくり返してステンレスの網を置いて、その上に置いています」

今野「一度、そのスタイルでここに飾ってみてください」

岩崎「盆美に?

齊藤()。みなさん、それでハードル下がりますね」

今野「ここから始めましょうっていう意味で」

齊藤「それって大事かもしれないですね。業者さんも盆栽を売ることに目が行っちゃって、もう少し買う側の立場を考える必要があるかもしれないです」

今野「水は葉っぱにあげるんですか、それとも根っ子?

齊藤「根元が基本です。鉢底に穴が開いているので、そこから水が抜けるくらい。たまに勘違いして、葉っぱにスプレーだけかけて終わりにする方がいるんですけど、観葉植物と違って盆栽は根っこがかなり養分を吸い上げているので、11回、根元にお願いします」

今野「タップリあげていいんですね」

齊藤「水はけのいい土を使ってるので。受け皿は基本的にはしないで、土のなかに残った水分を吸い上げてもらう感じですね」

今野「ずっと外に置いておいていいんですか?

齊藤「ものによりますね。寒さに強いけど暑さに弱い盆栽もあるので。夏に日差しを遮る必要や、冬に寒さを和らげる必要もあります」

今野「いろいろなんですね」

齊藤「ですので、幾つかお持ちになるといいと思います」

今野「ところで齊藤さん、大宮アルディージャは?

齊藤「残念ながらJリーグを見る機会がなくて、今回、今野さんがいらっしゃると聞いて、勉強させていただきました。普段はライオンズです」

今野「何回かコラボしたことありますね」

齊藤「学生のころ、文化放送の『ライオンズナイター』に今野さんがゲスト出演された回を聞いて、この人、本当にライオンズが好きなんだって感じたことを覚えています」

今野「そうなんだぁ。今後は、ぜひアルディージャも見てみてください」

齊藤「わかりました!

今野「というわけで、今日はありがとうございました!

岩崎・齊藤「ありがとうございました」

岩崎「このあと、お店の方にも」

今野「そうですね。いいものがあったら買ってみましょう」

↓取材風景の動画ハイライトはこちら


構成:粕川哲男
協力:さいたま市大宮盆栽美術館
〒331-0804埼玉県さいたま市北区土呂町2-24-3

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