今野さんが“タダのファン目線”でクラブ関係者らに逆取材を敢行するシリーズ企画から一転、今野さんが大宮周辺の行きたい場所をただただ訪れるという、迷走する雑談コーナーとなった本連載。今回も鉄道博物館編の続きをお届けします。
悠久の鉄道車両年表
及川「ここが車両ステーションを一望できる写真スポットです」
今野「へ~、こんな綺麗だったんだ。下にいたときは気づかなかった」
及川「ライトアップすると雰囲気が出ますよね」
今野「天井が高いなぁ」
及川「これが歴史のわかる車両年表です。150年前に鉄道が開業したとき、新橋、横浜間を歩いて行こうとすると、丸一日かかっていたようです」
今野「そうでしょうね」
及川「計算上は6時間だったらしいんですが、当然休みながらなので」
今野「俺の年(1978年)、何もないな」
及川「生まれた年ですか?」
今野「何も書いてない(笑)。でも、上に日中平和友好条約とサンシャイン開業がある。サンシャインは立派だな」
及川「これが開業当時の新幹線ですね」
今野「いまだにこのイメージが強いですね。いつから細長くなったんだろう? MAXって今も走ってます?」
及川「残念ながら昨年の秋、10月に通常営業は終わりました」
今野「じゃ今、2階建て新幹線ってないんですか?」
及川「はい。イベントでしか運行していません」
今野「2階建ての2階もいいけど、1階も線路すれすれで面白かったですよね」
及川「眺めが全然違いましたね。ここが仕事ステーションです。鉄道業は駅員や乗務員だけではなくメンテナンスをする方々も多いので、そのあたりの仕事も紹介している場所です」
今野「毎日来る子どもとかいるんじゃないですか」
及川「そうですね。これが非常ボタン。普段押すことはないと思いますが、この際だから押してみてください」
今野「恐いな……(ピーピーという警報音)。えっ! 実際もこんなものですか?」
及川「音量は、もう少し大きいかもしれません」
今野「もっとけたたましいのかと思った。ボタンの強さは一緒ですか?」
及川「感触は一緒です」
今野「軽く押せるんだ(と言いつつ3回押してみる)」
運転シミュレータを体験
及川「次は、今野さんに面白い体験をしてもらいましょう」
今野「ここまででも、十分面白いですけどね」
及川「運転士の気分を味わってもらおうと思います」
今野「え~」
及川「D51シミュレータで、SLの運転士になってもらいます」
今野「うわぁ」
及川「これは現役で走っていた車両を忠実に再現していて、当時SLを運転していた方も、『本物そっくりだ』と言ってくださっています」
今野「映像もあるんですね」
及川「そのあたりもリアルにできています。ここでバトンタッチして、うちのスタッフがご案内させていただきます」
中谷「ここからは私、中谷が担当させていただきます。よろしくお願いいたします」
今野「よろしくお願いします」
中谷「使うハンドル類について、ご案内させていただきます。上側のこちらのハンドルは加減弁ハンドルと言いまして、SLにはシリンダーという蒸気を溜める箱がついています。そちらに蒸気を送るためのハンドルです。こちら運転中にいっぱい使います」
今野「これを? こんな位置にあるのに使うんですね」
中谷「そうです。引いたり戻したりして、シリンダーに送る蒸気を細かく調整しています」
今野「ふ~ん」
中谷「続いて、こちらのハンドルは逆転機ハンドルと言いまして、こちらで機関車の進行方向を決めています」
今野「自分で決めなきゃいけないんですか?」
中谷「そうです! 前に進むか、後ろに進むか」
今野「あっ、前後の方向か」
中谷「はい。そちら、上側にメモリがついています。Mから上の80までは車両が後ろに、Mから下の80までは車両が前に進みます」
今野「なんか、逆の方がわかりやすいですけどね」
中谷「確かに(笑)。今回は下側の方を使います」
今野「どうすると前に進むんですか」
中谷「奥側にパチッと倒します。これで、逆転機ハンドルが回る状態になりました」
今野「あっ、ここでロックしてたんですね」
中谷「そうです。逆転機ハンドルを右回りで、一番下の80までグルグルと回します」
今野「こうかな。またロックするのかな?」
中谷「いや、しなくて大丈夫です。こちら、運転中また使います」
今野「はい」
中谷「続いて左足のお膝元、前側に上下に2本のレバーがあります。こちらはドレイン弁、バイバス弁と言いまして、簡単に説明しますとシリンダーの蓋の役割をしています。この2本を奥側に倒します。そうするとシリンダーに蒸気が溜まる状態になりました」
今野「ふ~ん」
中谷「次にブレーキを緩めます。2つある下側のブレーキを操作します。操作しますと、ブレーキの圧力計の赤い針がゼロまで下がります。これでブレーキが緩んで、出発できる状態になりました。では、お足下右側にペダルがあります。こちらを踏んでいただくと、汽笛が鳴ります。鳴らしてみましょう」
今野「プオォォォーー。うおぉぉぉ」
中谷「汽笛も本物そっくりですね(笑)」
今野「汽笛は足で操作するんですね」
中谷「そうなんです。じゃ、出発します。こちらの加減弁ハンドル、自転車のブレーキと同じような形になっていますので、奥側まで握っていただきます。そうすると、もうすぐ車両が出発します」
今野「うわぁぁぁ」
中谷「動き出しましたね。次に、逆転機ハンドルを回します。先ほどの逆ですね」
今野「こうかな」
中谷「いま出発した駅が、岩手県の花巻駅になります。ここから、釜石線の似内という次の駅まで運転していただきます」
今野「実際に見える景色って、こんなもんなんですか?」
中谷「はい。実際はボイラーが数m先にありますので、見える視界はもう少し狭いです」
(シューシューシュー!)
今野「すごい音ですね」
中谷「水を排出しつつ下から蒸気が出ている状態です。では、ドレイン弁を戻しましょう。そして、次は加減弁ハンドルを使って蒸気を足します。はいOKです」
今野「難しいなぁ。でも、全部の部品が、見た目よりも軽いですね」
中谷「そうなんですよ」
今野「もっと重いもんだと思っていました」
中谷「自分も最初はそう思っていて、実際にやってみてこんなに軽いんだと驚きました」
今野「ですよね」
中谷「あと1㎞ほどで到着です。このあと、ブレーキをかけて止まるんですけど、それが一番難しいかもしれません」
今野「そうでしょうね」
中谷「この赤い部分は非常ブレーキで、ちょっとでも入ると非常ブレーキが作動するので、勢いあまって入れ過ぎないようにお気をつけください」
今野「……なにしろやったことがないもんだから、加減が。もうやるんですか?」
中谷「まだ大丈夫です。停止位置まで残り200mほどございます」
今野「もうやばいんじゃない?」
中谷「いや、まだ大丈夫です。そこまで速度が出ていないので」
今野「いまは18kmくらいですか」
中谷「じゃ、ここでブレーキ入れちゃいましょう」
今野「はい」
中谷「これでブレーキがかかって減速して停車しますが……あれ、ちょっと……」
今野「めちゃくちゃ過ぎてるじゃないですかっ」
中谷「あははは。ちょっと遅かったです」
今野「俺言いましたよね。もういいんじゃないかって!」
中谷「そのとおりです。すみません(笑)。本当はバッテンの停止位置に合わせるように停車するんですが、行き過ぎてしまいました」
今野「あははは」
中谷「以上になります。お疲れさまでした」
今野「(モニターを見て)あっ、18mも越えてる……。いやぁ、鉄道タレントじゃないのに、こんなことやらせてもらっていいのかな。ありがとうございました」
中谷「こちらこそ」
今野「これ(軍手)はどうしたら?」
中谷「差し上げています。記念乗車ということで」
今野「いやぁ、有料(「てっぱく抽選アプリ」で抽選。510円)に値する体験でした」
――最後に、鉄道博物館の感想をお願いします。
今野「大宮アルディージャの試合でNACK5スタジアム大宮に行く前に、ここに寄ったら楽しいだろうって思いました。鉄道タレントでもない芸能人が運転体験をやらせてもらったのは、初めてじゃないかな。興奮はありましたし、楽しかったです。お疲れさまでした」
構成:粕川哲男
協力:鉄道博物館
〒330-0852 埼玉県さいたま市大宮区大成町3丁目47番