DF2 菊地光将【マンスリープレーヤーインタビュー】

クラブへの思い

オレンジのユニフォームを着て8シーズンになる。在籍年数ではアカデミーからトップチームに昇格した金澤慎と渡部大輔が先行するが、他クラブから移籍加入した選手では最長だ。

「長過ぎですね」

菊地光将はそう言って、柔らかな笑みを浮かべる。空中戦と対人プレーに強く、攻撃のビルドアップも信頼できるこのセンターバックには、これまで何度か他クラブからオファーが届いたと言われている。だが、菊地はクラブへの忠誠を尽くしてきた。

「好きですし、愛着がありますから」

シンプルな答えには、もう少し続きがある。

「キャプテンという立場もありましたし、NACK5スタジアム大宮では高校生からプレーしてきました。あのスタジムでプレーできる喜びは、アルディージャへ移籍してきてすごく感じましたね」

クラブに対する揺らぎのない思いがあり、チームをまとめていく責任感に目覚めていた。プロ入り前から慣れ親しんだスタジアムに、魅せられてもいた。もちろん、ファン・サポーターとの連帯感は、胸中でしっかりと芽生えていった。キャリアの円熟期をアルディージャに捧げてきたのも、そうやって考えると必然だったのかもしれない。

背番号2を託されたことも、アルディージャが特別なクラブとなった理由にあげられるのではないだろうか。クラブの黎明期を支えた奥野誠一郎さんが長く背負い、浦和東高校と駒澤大学の同級生だった塚本泰史クラブアンバサダーも着けた「2」は、アルディージャにとって特別な番号の一つと言っていい。

「着けさせてもらっている感じというか、僕自身は自分の番号と思っていません。重みのある番号かもしれませんが、だからといって自分にできることは変わらないので、しっかりとプレーすることだけを意識しています」

今シーズンは第30節終了時点で24試合に出場している。17年、18年の出場試合数をすでに上回り、15年の29試合、16年の27試合も超えていきそうだ。

「17年と18年より多い? えっ、そうなんですか。全然意識してなかったです。自分としてはコンディションを維持するために自分に合ったものを見つけつつ、やらなきゃいけないことはしっかりやる、ということに気を付けているぐらいなんですけどね。まあでも、30歳を過ぎて脂身の多いお肉も食べられるし、内臓は若返っているかもしれないかな」


経験をピッチに

ピッチの中では蓄積してきた経験を感じさせる。それだけに、第29節・愛媛FC戦には悔しさを募らせた。「経験といったものを出さないといけない立場になっている意味で、愛媛戦は悔しい結果でした」と振り返るのだ。ディフェンスリーダーの菊地が、1-5という結果に責任を感じないはずはない。

頼れる経験者はまた、高木琢也監督が持ち込んだ3バックに意欲的だ。

「(前所属の川崎フロンターレで)やったことはありましたけど、大宮は基本的に4バックでしたし、シーズンを通して本格的にやるのは初めて。一日、一日が勉強というか、監督やチームメートとコミュニケーションを取りながらやってきて、自分自身のプレーの幅を広げることにつながっているな、と感じます」

愛媛戦で足に違和感を残した菊地は、翌節のヴァンフォーレ甲府戦を欠場した。チームは0-1で敗れ、今シーズン初の連敗を喫した。

「この時期になってくると、順位や勝点が気にならないと言えば嘘になる。つくづく思うのは、連勝をしないと上にはいけないということ。残り12試合の時点で首位にいる柏レイソルは、11連勝で勝点を一気に伸ばした。2位の横浜FCも、ずっと負けなしで順位をグイグイ上げてきた。連勝すること、連敗をしないことが、ここから先は特に重要になってくる」

クラブが目標に掲げた「J2優勝でJ1昇格」へ向けて、残り12試合はトーナメントのようなメンタリティーで戦っていくことになるだろう。緊迫感が高まっていくシーズン終盤を乗り切るために、ファン・サポーターの後押しは欠かせない。

「チームの目標を達成するために、ここからもっとチーム一丸というか、一つになっていかなければいけない。ファン・サポーターの皆さんにはいつも力をもらっていて、皆さんの声援があるから僕ら選手は頑張れる。シーズンが終わったときに皆さんが笑顔を浮かべられるように、11月24日の最終節まで戦い抜く。これまで同様に、熱い声援をお願いします」

培ってきた経験とJ1昇格への決意が、菊地を衝き動かす。

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