今野浩喜の「タダのファン目線記」食堂の川上さん
突撃インタビューシリーズ 今野浩喜 vs 食堂の川上さん

今野さんがタダのファン目線でクラブスタッフに逆取材を敢行! 今回はクラブハウスの食堂で選手に食事を提供している株式会社若(わかな)菜の川上さんを取材しました。


とても早起き川上さん

今野「よろしくお願いします。はじめに食堂の概要から教えてもらえますか?」

川上「若手の選手は朝、昼、晩と、ここで食べています。大卒選手は1年間、高卒選手は3年間、クラブハウスから近い寮に入ることになっています。それ以外の選手も、昼食は全員がここで食べていますし、希望があれば朝と晩も作っています」

今野「へえ、若手は実家が大宮にあっても寮に入らないといけないのですか?」

川上「そうですね。何を食べているかをこちらがチェックできることはメリットです。若いころって、朝は食事よりも寝る方に時間を充てたいじゃないですか。だけど、サッカー選手は体が資本。若い選手も、朝からしっかりと食事がとれるのは大きいと思います」

今野「確かにそうですね。そうすると、川上さんは何時に起きて朝食を作っているんです?」

川上「ここに入るのがだいたい5時です」

今野「眠くないですか?」

川上「眠いですよ(笑)」

今野「そうですよね(笑)。ちなみに川上さんは今朝、何を食べましたか?」

川上「朝は食べないんです」

今野「5時に起きて? お腹空いてないですか?」

川上「集中しているとそんなに気にならないんです。しかも、今日は特別なお弁当を作らないといけなくて」

今野「何のお弁当?」

川上「明日はアウェイゲームで、選手は今日が移動日なんです」

今野「選手のお弁当を用意するということですか?」

川上「はい。移動のバスで食べてもらいます」

今野「これが実際に作っているお弁当ですね。どれどれ。わっ、すごい豪華ですね」

川上「生姜焼きと鮭。選手はシンプルなものがいいって言いますね」

今野「川上さんはあまり食べないんですね。おいしそうなのに」

川上「ホッとしたときしか食べたいと思わないんです。だいたい食べるのは昼の2時から3時の間。作っているときは味見もしてますから」



きゅうりが苦手な川上さん

今野「1週間の献立の中で、ここに公式戦メニューとあります。これはどんなメニューですか?」

川上「試合日の特別メニューです。エネルギーを使うので、肉を2種類と魚、スパゲティを食べてもらいます」

今野「多いですね」

川上「もちろん量は各自で調整してもらいます。ただ、これ以外に試合の前はスパゲティやサンドイッチなどの軽食もあります。一番消耗している試合後も、おにぎりやサンドイッチを出しています」

今野「そういえば、ザックジャパンのときも試合の後にでかいおにぎりを食べていましたね。こんなに食べても試合後は体重が落ちるものなんですか?」

川上「多い選手で2、3キロは落ちると言っていました」

今野「普通の人なら、1日何も食べなくてもそんなに落ちないですよ。試合があるとそれくらいカロリーを消費するんですね。ちなみに、普段の献立にはだいたいの決まりごとがあるんですか?」

川上「お昼に関しては主菜が2つです。あとはサラダバーと、白米と玄米の2種類を出しています」

今野「サラダは自分次第ということですね?」

川上「でも、みんなちゃんと食べますよ。グルテンフリー(小麦などに含まれるタンパク質のグルテンを抜く食事法)をやっている選手もいるし、鳥の皮を取ってくださいという選手もいます」

今野「でも、鳥って皮がおいしいんですよね」

川上「分かります。そうですよね(笑)」

今野「好き嫌いが激しいのは誰ですか?」

川上「誰だろう? (後ろで食事の支度をしているスタッフに向かって)誰だと思う?」

スタッフ「カンジくん」

川上「奥抜選手です(笑)」

今野「(笑)。何がダメなんですか?」

スタッフ「野菜がダメ。加藤くんも好き嫌いは多いですよ。野菜炒めのときも、肉が多めで野菜はちょっと。これじゃあ、肉炒めだよねって……。本人たちも意識はしているようですけど」

今野「ちなみに川上さんの嫌いな食べ物は?」

川上「キュウリ。瓜系がダメです。スイカとかメロンも苦手ですね」

今野「でも、選手には出すんですよね。どういう気持ちで出してるんです?」

川上「おいしくないよな、これって(笑)」

ゆで卵大好き大前さん

今野「この仕事をやってて良かったと思う瞬間は?」

川上「チームが勝てばうれしいし、あとは、選手の素の顔が見られるというんですかね。それが楽しいです」

今野「選手の素の顔ですか。例えば?」

川上「う〜ん」

今野「監督の悪口とか言っているんですか?」

川上「いえいえ(笑)。車とかゲームの話です。でも、距離感が難しいですよね。遠すぎてもダメだし、近すぎるのも良くない。ここはオープンキッチンだからコミュニケーションも取りやすいけど、その意味では、『今日はおいしかったよ』とか『これが食べたい』と言ってくれるのはうれしいです」

今野「選手の成長を間近で見られるのも特権ですね」

川上「はい。特にアカデミー出身の選手はそうですね。大山選手はトップに昇格した2014年から見ているんですけど、当時はすごく体が細かったんです。それが今ではガッチリしています。5年前とは違うなって思います。弊社は志木クラブハウスでU18の選手たちにも食事を提供しているんですが、トップチーム同様に栄養管理士がメニューを考えているんです。その人によると、U18の選手はお米を600グラムは食べないといけないらしいです」

今野「それは多いんですか?」

川上「お茶碗一杯で150〜200グラムと言われていますから、だいたい3〜4倍ですよね」

今野「ご飯はエネルギーになるから、それくらい必要なんでしょうね。ちなみに、選手に言われて取り入れたメニューはありますか?」

川上「大前選手に言われて、サラダにゆで卵を入れるようになりました」

今野「何でゆで卵なんだろう」

川上「単純に好きみたいです(笑)。あとは、奥井選手に言われて玄米も取り入れるようになりました」

今野「俺は今日、コンビニでブリトーとグリーンスムージー、アイスコーヒー、桃を買って食べたんですけど、どうですか?」

川上「いいと思います(笑)」

今野「言い方が『勝手にしろ』みたいな感じですね(笑)。ところで、川上さんはここに来るまで、他のチームでお仕事をされていたんですか?」

川上「いえ、まったく。ずっとレストランで働いていました。正直、サッカーにもほとんど興味がなかった。だから、プロスポーツの現場が初めてで、そこに対するプレッシャーや責任はいまだにあります」

今野「ホームゲームのときは会場で試合を見ているんですか?」

川上「いえ、試合は見られないです。ここで作った料理をVIP席にお届けしていて。実はちゃんと試合を見たこともないんです」

今野「チケットくらいはもらえるでしょう(笑)。じゃあ、どの選手がどんなプレーをしているのかも分からないじゃないですか」

川上「練習は見ていますよ。タイミング的に『そろそろ焼こうかな』とか『そろそろ茹でようかな』とか。時期によって練習時間も変わるので、それを見ながら調理しています。試合前はちょっと長めに練習したり、暑い日は短くなったりしますからね」

今野「そういうご苦労があることを選手たちは知っているんですかね?」

川上「いやあ、知らないと思います」

今野「言ってやったほうがいいですよ。『何でタイミング良く食事が出てくると思っているんだ』って(笑)」


記念撮影で中央を譲り合う今野さんと川上さん

インタビュアー:今野浩喜
構成:岩本勝暁

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