Vol.004 岩本勝暁「モスクワで身に付けた精神的タフさ」【オフィシャルライター「聞きたい放題」】

アルディージャ練習場では日々、様々な取材活動が行われていますが、サッカーと関係のないことはなかなか聞けない場合もあります。このコーナーでは、そんな話も含めて記者が気になる質問を、どんどん選手にぶつけてみます。今回は、加入したばかりのイッペイ・シノヅカ選手に突撃取材をしました。

Vol.004 岩本勝暁
モスクワで身に付けた精神的タフさ

――チームに合流して2日目になります。感触はどうですか。
「コンディションは1日目よりもいいし、これからもっと上げていって試合に絡めるようになりたいですね。練習からアピールしていきたいと思っています」

――試合形式の練習ではウイングバックに入っていました。3-4-2-1のウイングバックは経験があるのですか。
「いえ、経験はありません。でも、横浜F・マリノスではサイドバックもやっていました。与えられたポジションでアピールしていきたいです」

――登録名がカタカナ表記です。最初、「あれ?」っと思ったのですが。
「そうですね。ロシア国籍なので、書類上の表記はローマ字なんです。それでカタカナにしています。サポーターの方にもよく聞かれますが、もう100回くらい答えていますよ(笑)。でも、不思議に思うのは当たり前ですよね」

――プロとしてのキャリアをロシアのスパルタクⅡ・モスクワでスタートさせています。高校の途中まで日本で生活していましたが、ロシアに行って変わったことはありますか。
「貧富の差が激しい国ですし、いろいろなことを見てきました。リーグもロシア全土で行われるので、アウェイの場合は5、6時間の移動が当たり前。飛行機で9時間の移動をすることもあります。そういうリーグでプレーしてきたので、精神的にタフになりました。日本では良い環境でやれているので、その分、負けたくない気持ちも強いです」

――チーム内の競争も激しかったですか。
「もちろんです。でも、それはどこに行ってもあることですから。それでも勝てるように練習してきたつもりです」

――日本から来たとなると、試合中にパスが回ってこないこともあるのではないですか。
「彼らからすれば、僕は外国籍のようなものですからね。もちろん、そんなこともありました。だけど、サッカーをやっている以上、サッカーで示さないといけない。逆に、サッカーで示すことができれば信頼を得られます。海外で活躍している日本人選手は同じことを言うと思いますが、それが普通のこと。最初はバカにされても、サッカーで勝てば、それ以上にリスペクトされるようになります」

――「周りを見返してやった」という出来事はありましたか。
「日々の練習から一生懸命やってきたので、特にきっかけがあったわけではありません。ただ、スパルタク・モスクワのユースチームにいたときに、全国ロシア・クラブユース大会で優秀MF賞のようなものをいただきました。それは自信になりましたね」


――ロシア語を1年でマスターしたという記事を見ました。
「いや、そんなことないです。いまだに練習しているし、そんな簡単な言葉じゃないですよ。ロシア語って、世界でも3本の指に入るくらい難しい言葉と言われているんですから。だんだん慣れてきたけど、最初の2、3年は本当に難しかった。今は普通に話せますが、それでも分からない単語はあります」

――その後、U-18ロシア代表に選出されました。
「独特な雰囲気というか、不思議な気持ちでしたね。でも、それも自信になりました。今もロシア国籍なので、日本で活躍していれば、またロシア代表のユニフォームを着るチャンスがあると思っています」

――それまで日本で長く過ごしながらロシア代表のユニフォームを着るというのは、確かに不思議な気持ちかもしれないですね。
「母がロシア人なので、自分にロシアの血が入っているというのは分かっています。だけど、日本代表のユニフォームに袖を通す前にU-18ロシア代表になったので、やはり不思議な気持ちでしたね」

――スパルタク・モスクワは日本でもよく知られている名門クラブです。環境はいかがでしたか。
「天然芝のピッチを3面も持っていて、環境はすごく充実していました。僕がいたときに建設中だった新しいスタジアムもできあがりました。クラブハウスなどの施設も、どんどん大きくなっていますよ」

――ロシアリーグの中でも特別ですか。
「もちろんです。スパルタクは、ロシアの中でも最も有名なクラブの一つで歴史もある。サッカーのレベルも高いです」

――アルディージャでの活躍も楽しみにしています。どんなところをアピールしていきたいですか。
「ドリブルとかクロス、前でプレーできるならシュートも。得点やアシストにこだわりながらやっていきたいと思います!」


岩本 勝暁 (いわもと かつあき)
2002年にフリーのスポーツライターとなり、サッカー、バレーボール、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ大会から2016年リオ大会まで4大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。2003年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。

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