【聞きたい放題】岡庭愁人「誰もが『岡庭が来て変わった』と思えるプレーを見せていきたい」

選手にピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回はシーズン途中に加入し右SBのポジションで奮闘する岡庭愁人選手に話を聞きました。

聞き手=須賀 大輔

誰もが「岡庭が来て変わった」と思えるプレーを見せていきたい


成長するための決断

――加入して2カ月ほどですが、チームにすっかり溶け込んでいるように映ります。
「チームに適応するにはもっと時間がかかると思っていましたが、ベテラン選手たちがコミュニケーションをうまく取ってくれて、意外にすんなりというか、溶け込むのは早かったと思います」

――先輩たちにいじられている様子も見かけます。
「最初のあいさつでも『いじってください』と言ったので、それもあってかいろいろな人が声をかけてくれます。特にいじってくれるのはミユくん(三幸)(矢島)慎也くん、カワくん(河田)が多いですね()

――移籍の経緯を教えてください。ジュニアユース、ユースとFC東京のアカデミーで育ち、FC東京に戻ることだけを考えて大学時代はプレーしていたと思います。その夢がかなったチームから半年で移籍する決断をした理由は何が大きかったですか?
FC東京でも最初から試合に出られるとは思っていなかったですし、厳しい競争があることも分かっていました。それでも、東京が好きで東京でプレーしたい気持ちが強くて、最初は東京でプレーすることしか考えていなかったです。契約のあるうちはFC東京で戦うと決めていました。ただ、今季から監督が交代し、言葉にするのが難しい部分もありますが、監督の求めるスタイルに自分がハマっていない感覚があって、そこに適応し切れていない自分もいました。何よりも自分の特長を出し切れていなかった。いろいろな葛藤があるなか、大卒選手として様々なことを考えたし、多くの人と話して様々なアドバイスをもらいました。そこで、『カテゴリーを下げてでも試合に出て自分の価値をサッカー界で表現したい』思いがすごく強くなりました。そうすることで東京を離れる現実がついてくるのは分かっていたけど、プロ入りから3年ほどの出場数や活躍でその後のサッカー人生は決まってくると思っているので、サッカー選手として長くプレーするため、一つでも上のカテゴリーを目指していくためには試合に出ながら成長していくことが一番だと思い決断しました。自分の人生なのでそこは割り切って決めました」

自分の貢献度はまだ足りない

――悩んだり迷ったりした部分や決め手はどんなことだったのでしょうか?
FC東京には偉大な先輩が多くいたので、そこでいろいろと盗んで成長していきたい思いもありましたけど、自分と向き合うことが一番成長につながると思っています。結局は、自分のことは自分が一番分かっていて、最後は自分で決めないといけない。そう考えると、自分はお手本の人から盗んでいくよりも、ピッチで表現して出た課題を修正して積み上げていくほうが大事だと思いました。そんな状況のときに、試合に出ていないのにオファーをくれた大宮にはすごく感謝しています。しっかりと自分を評価してくれて、『一緒にサッカーをしよう』と言ってくれた言葉がすごく心に刺さりました。そこで、半年と限られた時間ですけど、このチームために自分の全力を出して何とか救いたいと本当に思いましたし、一つでも上の順位に行きたいと強く思いました」

――移籍直後から熱い言葉を発していて、ピッチ上ではその言葉どおり、熱いプレーを見せてくれていると感じます。
「自分としてはそれくらいやれて当たり前だと思っています。『この前の試合よりも良かった』となったとしても、チームが勝っていなければ何も意味がないですし、DFならば失点にもっと目を向けないといけない。試合に出させてもらっていることは感謝していますけど、自分の評価としてはチームへの貢献はまだまだ足りていないです。加入した最初のころは少し流れを変えられたかもしれないですけど、結果を見ればそれを続けられていない。もっと目に見える形で、誰もが『岡庭が来て変わった』と思えるプレーを見せていきたいです」

――自分がいいプレーをするのは当たり前であり、勝敗に直結するプレーをしないといけないということですか?
「自己評価と他者評価がかけ離れすぎるのも良くないですけど、いまの自分のパフォーマンスがいいとは思っていないです。自分のプレーがいいときはチームも勝っている。勝つことが次のステップにつながるし、チームとしても上に行けると思っています。勝てるチームにはそれなりの理由があって、そういう選手がいるから勝てる。勝てないチームはまだまだなところがあるから勝てない。実際、自分が失点に絡んでいますし、アシストもできていないので、パフォーマンスはまだまだ良くしていかないといけないと思っています。J1レベルやそれ以上のレベルで考えていかないと、これからの自分が腐っていくような気がするので、変な慣れには染まりたくないです。そのためにも、練習から常にどうすればいいか考えてプレーしています」

河本裕之と交わした言葉

――背番号3をつけたのも強い思いの表れだと感じます。
「大宮の3番は偉大な選手がずっと付けていた番号だと知っていました。ただ、大宮の象徴として活躍されていた方がいなくなり、チームがこういう状況で移籍してきて、自分に対しても大宮というクラブに対しても貢献したい思いが強くありました。誰かがこの状況を変えないといけないと強く思っていたので、だったら、『どうせやるなら、自分の覚悟や野心を含め、いろいろな注目を浴びて責任がのしかかってくる3番をつけさせてもらおう』と思い決めました」

――昨季まで3番を背負っていた河本裕之さんと会ってお話をしたそうですね。
「挨拶をしようと思っていたなか、早いタイミングでお会いして話ができました。ちゃんと自分の思いを伝えられたし、認知してもらえていると分かったので、3番に対しての思いや覚悟は決まりました。『育成型のレンタルでまだまだ未熟ですけど偉大な番号をつけさせてもらっています』とお伝えしたら、河本さんに『若い子に引っ張ってほしいと思っているし、大宮の試合は毎回チェックしているからがんばって』と言ってもらい、より一層がんばらないといけないなと思いました」

――岡庭選手は、“覚悟”や“野心”という言葉をよく使われますが、将来的な夢や目標はどんなことをイメージしているのでしょうか?
「後先を考えることはあまり好きではないです。目の前の課題や1試合、1試合に思いを込めることが大事だと思っています。そこに本気で取り組むことで成功しても失敗しても素直で言い訳のきかない反省材料が出てくる。例えばですけど、やる気がないなかでの反省材料や改善点には、コンディションがよくなかったからとか、こういう葛藤があったからとか、言い訳ができると思っています。そこからは逃げたくないんです。常に頭の中はクリーンにして全力で取り組み、そこで出た課題はすごく素直なものだと思うので、それをどう修正していくかを大事にしています。要するに、目の前の試合に勝つために本気で向かっていくことが自分自身の成長につながり、チームが上に行くことにもつながっていくと考えています。海外に挑戦したいとか、一つでも上のカテゴリーでプレーしたいとか、将来的な大きな目標はありますけど、選手として勝っていきたい、その思いが強いです」

レジェンドからの学び

――現役時代は日本代表のSBとして活躍されていた相馬監督との出会いも大宮に来たからこその出来事ですね。
「もちろん、鹿島や日本代表で活躍されていたことは知っていましたけど、正直、そこまで詳しくは知らなくて、大宮に来てから当時の映像を観たり、記事を読んだりしました。そこであらためて偉大な方だと知りました」

――実際に指導を受けてみて、いかがですか?
「守備の考え方、見方はすごく腑に落ちる言い方をしてくれますし、そういう守備の仕方もあるのかと新しい発見を与えてくれています。いまのスタイルはSBの守る範囲は広いけど、そこに葛藤していることはいいことだと思っています。自分の課題として、不利な状況でも守れるようにしたいと考えていて、このサッカーに順応できたら選手としての幅が広がる思いがあります。加入直後には『いろいろと教えてください』と伝えさせてもらい、いまは難しいことも多いですけど、ポジティブに捉えて何でも吸収したいと思っています。出会いに感謝と言いますか、プロ1年目のタイミングで相馬監督に教えてもらえることは今後のサッカー人生において大きな財産になると思いますね」

残留のためにできること

――大宮に対して愛着は湧いてきていますか?
「自分ではだいぶユニフォーム姿も馴染んできていると思っています。それに地元のクラブでもあり、小学生のころから大宮のアカデミーがすごく充実していて入りたいと思っていた時期もありますし、対戦をしたこともあります。両親も大宮に入ってほしいと思っていた気持ちもあったみたいで、ピッチに立っている姿を見たいと思ってくれています。何かの縁でこうやって大宮に来られたので、自分のできることを最大限やりたいです。加入して、置かれている環境やこれまでの歴史を考えても、もっと上にいないといけないクラブだとあらためて思いました。そのためにも結果で恩返しをしたいです」

――残留が求められる今季、そこに向けてはいかがでしょうか?
「あと9試合(第35節・甲府戦の前にインタビューを実施)で連戦もあって、本当にやってみたらあっという間だと思っています。だからいい準備をしたいです。1試合、1試合を全力で戦って、勝点を積み重ねることを大切にしていきたい。具体的な数字で言えば、勝点40以上ないと残留は厳しいと思うので4勝は絶対にしたい。先ほどと少し矛盾する部分もありますけど、過ぎたことを後悔したくないので、ちょっと先のことを考えて逆算することも勝つ上では大事だと思います。それを自分だけが分かっていてもチーム全体が分かっていなかったら意味がないので、伝えていく作業は率先してやっていきたいです」

――残留の導き手になれる、なってもらわないと困る存在だと思っています。
「それは自分でも思っています。レンタル移籍の身でまだ2カ月くらいしか経っていないですけど、チームが勝つためなら自分にできることをやらないと絶対に後悔すると思っています。そういう部分を含めて、もっといいチームになっていかないといけないので、もっともっとできることはあると、この短時間でも思っています」

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