【ライターコラム「春夏秋橙」】ホーム連勝も黒星先行。
「チャレンジャー」の立場で勝利を積み上げたい

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、開幕してからここまでの5試合を戸塚啓記者に振り返っていただきました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
ホーム連勝も黒星先行。
「チャレンジャー」の立場で勝利を積み上げたい


悔しい開幕黒星スタート

2023年の明治安田生命J2は、319日までに5節を終えた。大宮は23敗で12位となっている。

218日の開幕節は、アウェイのレノファ山口FC戦だった。先発のうち9人は22年の最終節と同じで、数少ない入れ替わりはGK笠原昂史とMF大澤朋也だった。いずれも期限付き移籍から復帰し、開幕スタメンを勝ち取った。

高い位置からボールを奪いにいくコンセプトを掲げるなかで、前線からうまくハメ込んだ場面があった。一方で、連動する前にブロックのすき間を突かれることもあった。

公式記録上のシュート数は10対9で、試合内容は互角と言っていいものだった。しかし72分、昨季所属した矢島慎也に決められ、0-1の黒星スタートとなった。



アンジェFW起用で攻撃が活性化

翌2節はホームにツエーゲン金沢を迎えた。相馬直樹監督は前節から先発を3人入れ替え、右CBに浦上仁騎、左MFに高柳郁弥、2トップの一角にアンジェロッティが入った。

前半から主導権を握った。アンジェロッティが前線で起点を作ることで、チーム全体が前への矢印を持てるようになる。43分には小島幹敏の左ミドルが相手GKを襲い、直後の左CKから茂木力也がヘディングシュートを決めた。背番号2222年に続いてチームのシーズン初得点をゲットした。

後半も主導権を譲らずに試合を運び、アディショナルタイムに途中出場の大澤が追加点を蹴り込む。2-0で初勝利を挙げた。



4分間でまさかの2失点

翌3節はアウェイでロアッソ熊本と対峙した。ボール保持率の高い相手に対して、最終ラインが押し上げて全体がコンパクトさを保ちながら、ボールホルダーにプレッシャーをかけていく。ところが29分、最終ラインの背後へのパスに横のスライドが追いつかず、ペナルティエリア内から決められてしまう。33分にもペナルティエリア内でパスをつながれ、わずか4分間で2失点を喫した。

2点を追いかける後半は、立ち上がりからパワーを持って入った。岡庭愁人の左足シュートが左ポストを直撃し、途中出場の河田篤秀が鋭いボレーを放った。しかし得点を奪えず、81分に浦上が一発退場で数的不利に。GK笠原の好守などで踏みとどまるものの、アディショナルタイムの失点で0-3の敗北を喫した。



終了間際に劇的決勝点

1勝2敗でホームに戻った4節は、J1昇格候補のジュビロ磐田と対峙した。前半は大宮陣内での攻防が続き、アタッキングサードへなかなか侵入できない。それでも、相馬監督が「前半に失点しなかったのが大きかった」と話したように、熊本戦を反省材料に0-0でハーフタイムを迎える。その後も粘り強く試合を進めると、90+2分に河田の抜け出しが相手CBの反則を誘う。

退場者を出した相手を押し込むと、90+4分だった。泉澤が左サイドからクロスを入れ、ファーサイドの袴田裕太郎がヘディングで競り勝つ。ゴール前への折り返しにアンジェロッティが反応すると、NACK5スタジアム大宮が大歓声に包まれた。背番号19の加入後初得点で、劇的な勝利を挙げた。



微妙な判定に泣く

連勝を目指す第5節は、アウェイの栃木SC戦だ。序盤は中長距離のパスを使い、相手のハイプレスを回避しながらゴールへ迫る。30分前後には立て続けに好機を得るが、スコアを動かすことはできない。

先制点を奪ったのは70分だ。右ショートコーナーの流れで、岡庭がゴール前へクロスを供給する。これを袴田が折り返し、アンジェロッティが左ボレーで仕留めた。

1-0とリードしたが、このままでは終わらない。79分、自陣でボールを奪われ、強烈なミドルを決められる。その2分後にはバックパスにチャージされて試合を引っ繰り返された。スロー映像では相手にハンドが認められるが、J2VARの運用がない。得点は認められ、1-2で敗れてしまった。



J2リーグ全体を見渡せば、J1昇格候補と目されるチームが中位から下位にいる。一方で、J3から昇格したいわきFCと藤枝MYFCが、すでに2勝を記録している。しばらくは混戦模様となりそうだ。相馬監督が強調する「チャレンジャー」の立場で目前の勝利に集中し、勝点を積み上げていきたい。



戸塚 啓(とつか けい)

1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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