【ライターコラム「春夏秋橙」】“さいたまダービー”を制し、高円宮杯全日本U-15出場を決める

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、アカデミーの定点観測を続けている土地記者に、第17回関東ユース(U-15)サッカーリーグ1部最終節の模様をレポートしてもらいました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
“さいたまダービー”を制し、高円宮杯全日本U-15出場を決める


108()、大宮アルディージャU15の第17回関東ユース(U-15)サッカーリーグ1部の全日程が終了した。35日に始まった全10チームによるホーム&アウェイ総当たり、約7カ月にわたる全18節の戦いは、上位チームに高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権大会への出場権が与えられる極めて重要な大会である。8連勝を含む12戦負けなしなど快進撃を続けた今季、優勝の可能性をはらんだリーグ戦の締めくくりの相手は、浦和レッズジュニアユース(以下、浦和JY)。浦和JYは逆に、関東リーグ1部からの降格の危機にある。最終節での“さいたまダービー”は、優勝と残留を懸けた決死の大一番となった。

「魂と魂のぶつかり合い」。丹野友輔監督は、試合前にさいたまダービーをそう表し、選手の闘志に火を点けた。

選手もそれに応えるプレーを見せる。序盤こそ降格回避へ浦和JYが圧力をかけてきたが、大宮U155分、13分とスピードスター中島大翔が相手GK11の決定機を作り出す。徐々にペースを握り始めた大宮U15は、27分に再度中島がしかけ、CKのチャンスを得た。

丹野監督も「武器」と自負するセットプレー。キッカーの神田泰斗も、「(ゴール前の)入っていくところは共有していて、そこを狙って蹴ってるって感じです」と、しっかりとイメージできていた。その通りに、神田の左足が振られると、ゴール前へ勢いよく走り込んだ中澤凜がドンピシャリのヘディング。見事にゴールネットは揺らされ、大宮U15が先制に成功した。

後半は、立ち上がりから大宮U15が追加点へチャージをかける。45分、木寺優直が機を見た攻撃参加から放ったシュートはクロスバーを叩く。54分には久良木慶斗が右からの崩しで決定的な場面を迎える。56分には石川匠が強烈なシュートを放つが相手GKに阻まれる。直後のCKでは、ファーサイドでエドワード真秀が頭で押し込もうとしたが、これも決まらなかった。

「決定機がたくさんある中でも決められない、というゲームが多かった。決め切れないのがチームの課題」と丹野監督は今季を振り返る。この試合もそうなってしまうのか。そう思われたが、ここでエースが奮起した。61分、中島が中盤でのこぼれ球を拾うと一気にゴール前へ。三度目の正直で、今度はしっかりと決め切った。

「前半の2回のチャンスで決められずに、ちょっと折れそうな部分もありました。でもみんなが、まだあるぞって励ましてくれて、次のチャンスは絶対に仕留めようと思ってました。いい感じでボールがこぼれてきて、持ち味のスピードを生かして決めることができたので、ほっとしてます」(中島)

この後は、相手にボールを持たれても最後はやらせない、しっかりとした対応が続く。時折選手交代を織り交ぜながら時計を進め、そしてタイムアップ。2023年の関東リーグを、さいたまダービーに無失点で勝利するという最高の形で締めくくった。

他チームの試合消化数の関係で、最終順位は確定していないが、リーグ戦全18試合で1143敗、23得点13失点という結果を残し、2位以上となることが決定。12月に行なわれる高円宮杯JFA35回全日本U-15サッカー選手権大会への出場権を確保した。クラブとしては2020年以来の出場権獲得となるが、この年は新型コロナの影響で出場を辞退しており、実質的には2019年以来4年ぶりの出場となる。

「選手とも全国優勝は目標にしてあるので、その目標をしっかり達成できるようにしたいと思います」(丹野監督) 

リーグ最少失点の堅守に決定力を磨けば、それも決して夢物語ではない。2019年の第3位を超え、そしてクラブの歴史を塗り替える。

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