今野さんが「ただのファン目線」で行きたい場所に行ったり、会いたい人に会うコーナーとなった本連載。前回に続いて、10月下旬にリニューアルオープンしたオレンジスクウェアの店長兼グッズ担当・柏手さんがご登場。アルディージャに入る前のお話しがきっかけで、謎のベストイレブンが完成しました。
湘南→イベント会社→大宮へ
今野「かしわで、さんですよね」
柏手「はい」
今野「まさにこの(パチンと手を鳴らす)字ですか」
柏手「柏市の柏に、人間の手なので」
今野「言いたくなかったらあれですけど、おいくつですか?」
柏手「私は34で、間もなく35歳に。ふははは……(笑)」
今野「どういう笑い(笑)」
柏手「そろそろ40代だなって」
今野「私は何歳だと思います?」
柏手「う~ん、40歳くらいですか?」
今野「44歳なんですけどね。だから、30代半ばは若いですよ」
柏手「まだまだ頑張らないと」
今野「オレンジスクウェアでは、いつから働いているんですか?」
柏手「去年の4月からになるので、1年半を過ぎたところです」
今野「それまでは何を?」
柏手「イベント会社に約8年いました。新卒で別のクラブに入っていたので……」
今野「別のイベント会社?」
柏手「いや、新卒のときは別のJリーグクラブにいました」
今野「イベント会社っていうのは、どういうことをしてたんですか?」
柏手「私はグッズ関連を担当していたので、それこそ大宮アルディージャのグッズを業務委託という形で請け負っていました」
今野「それが何で?」
柏手「グッズ担当の経験があるということで、声を掛けていただきました」
今野「ということは、2回転職をしている」
柏手「そうですね」
今野「いやぁ、俺なんか高卒でずっと同じ仕事してるので、転職って勇気いりますか?」
柏手「いりますけど、幸いなことに、やっている内容は新卒のタイミングからこれまで、急激な変化はないので」
今野「大きく分けると同じ仕事ってことか。最初に入ったクラブは言えないんですか?」
柏手「全然大丈夫です(笑)。湘南ベルマーレです」
今野「いつごろですか?」
柏手「2010年の後半から2013年のシーズンが終わるまでだったので。反町(康治)監督がJ1に上げた年に始まり、J2降格を経験して、曺貴裁監督に代わってもう一度J1に上がる濃密な3年間でした」
今野「曺貴裁監督のサッカーは、ゴール前にやたら人数が来るやつですよね?」
柏手「スタミナサッカーと言うか……」
今野「みんなでバーッと」
柏手「それがある意味魅力で、今のベルマーレの原点でもあるかと」
今野「ベルマーレと言えば、俺の場合はベッチーニョとか、名良橋(晃)、岩本(輝雄)、田坂(和昭)ですからね」
柏手「あぁ(笑)」
今野「中田(英寿)でさえ、ちょっと新しく感じるというか……。名塚(善寛)とか小島(信幸)、野口(幸司)ですね。当時はまだ平塚でしたよね」
柏手「2000年に湘南ベルマーレに変わりました」
グッズ制作の悲喜こもごも
今野「大宮のことは、どういう感じで見ているんですか?」
柏手「クラブスタッフとして、どう地元に根付かせていくかって部分は、どこの地域でもどのクラブであろうとも変わらないかと。クラブのロゴやエンブレムがついたアイテムを身に着けてスタジアムに来てもらうために、どうアプローチしていくか。そこに注力して仕事をしているつもりです」
今野「仕事をやっていて、楽しいなって思うことは何なんですか?」
柏手「モノが売れた瞬間ですよね。自分が作ったものが売れて、カバンにつけているのを見たりすると。目に見えるところが、わかりやすい喜びですね」
今野「キツイなってことは?」
柏手「作ったけど、まったく売れないとか(笑)。100個作って10個しか売れないとか」
今野「例えば?」
柏手「コアな人にしか刺さらないとか、用途が限られているもの。コンテナとか……」
今野「う~ん」
柏手「多少は売れたんですけど、試合会場で使うものでもないので」
今野「それを買いに来る人じゃないと買わないですよね」
柏手「狙っている人だけですね」
今野「衝動買いするものでもないですからね。試合を観に行ったりもするんですか?」
柏手「基本はショップにいるので。ただ、試合中は皆さん試合に集中しているので、他のスタッフよりは試合を見られる確率は高いと思います」
今野「店のモニターとかで?」
柏手「iPadを置いてですね。店のモニターだと、お客さんが集まっちゃうので」
今野「試合中に来店する方もいるんですか?」
柏手「ごく稀に。どうしても仕事の都合で遅れている方とか」
今野「試合に行く途中の人ですね」
柏手「あと、このへんに住んでる方が『勝ってるの?』って」
今野「(笑)。勝敗を聞きに来る人が」
柏手「散歩の途中とかですかね」
今野「勝ち負けで売り上げが変わったりするんですか?」
柏手「試合後の来店数は大きく違いますね」
大宮&湘南の混合ベストイレブン
今野「そろそろ、大宮と湘南をひっくるめたベストイレブンをお願いしても(笑)」
柏手「新しいですね(笑)」
今野「混合のベストイレブンを。いいですよ、比率を考えなくても」
柏手「難しいですね。大宮は1年半で、歴が浅いので……」
今野「フォーメーションは?」
柏手「4-4-2じゃないですか。やっぱり、私は小島さん、名良橋さんの時代に小学生で、よく試合を見ていたので」
今野「いいですよ」
柏手「キーパーは小島さんですね」
今野「1年半前からの大宮で、ベストイレブンを選ぶのは大変だと思いますよ」
柏手「石川俊輝と菊地俊介は入れたいです」
今野「確かに。湘南と大宮の両方って選手、けっこういますよね。石原(直樹)選手とか」
柏手「石川と菊地の2人をド真ん中、ボランチに置くのがいいかと」
今野「センターバックは?」
柏手「90年代後半にベルマーレで活躍していた、クラウジオを」
今野「あぁ、あのドッカンってFKの」
柏手「あのインパクトは小学生には大事でした(笑)」
今野「いいと思います。昔のJリーガーの名前って、言うだけで面白いですよね」
柏手「はい(笑)。もう1人は今も湘南にいる大野和成を。新潟のユースから来た選手で、個人的に好きなので」
今野「どういうキャラなんですか?」
柏手「我々スタッフが少しムリを言っても対応してくれる、愛されるキャラですね」
今野「じゃ、サイドバックを」
柏手「名良橋さんと(岩本)テルさんですね、往年の。時代を問わずイケイケがいいとは思わないですけど、見ている人に刺さるサッカーであることは間違いない」
今野「はい。印象に残りますよね」
柏手「印象に残るってことが、次も見ようと思うきっかけになると思うので」
今野「あとは、前の4人ですね」
柏手「1人は、大宮でも湘南でも活躍した石原直樹さん。すごい選手ですよね」
今野「いい選手でしたよね。石原選手はどこに?」
柏手「やっぱりFWですね」
今野「あとの3人は?」
柏手「今後への期待を込めて、奥抜(侃志)は入れたいです」
今野「奥抜……。悲しいかな今年唯一盛り上がったところかも」
柏手「そうですね(笑)」
今野「試合に出られなくても、あれは上がったなぁ、さすがに」
柏手「次こそは」
今野「でも、大枠のメンバーにいることに驚きました」
柏手「すごいことですよね」
今野「相馬(勇紀)のポジションの、その後ろくらいにいるんだろうなって」
柏手「なんとか、頑張ってほしいですね」
今野「あのポジション、異様に人がいますけどね。あと2人いいですか」
柏手「私と同い年で、同じタイミングで湘南に入った高山薫で。めちゃくちゃ足が速い」
今野「いかつい感じの選手ですよね」
柏手「彼も特長がある選手なので、こういう話の中で出てくるのかなって」
今野「一つの武器を持っている選手は面白いですよね」
柏手「そういう選手こそ、最後にこれってところにあがってくるんじゃないですかね」
今野「あと1人」
柏手「高山が右、奥抜が左なので、FWかぁ。ズラタンとかノヴァコヴィッチとかも思い浮かびましたけど、実際に見ていないので……。自分の目で見て印象に残っているという意味では、フランスワールドカップのときに日本代表に選ばれた呂比須(ワグナー)かな」
今野「よかったですよね。すごく救世主感がありましたよね」
柏手「予選の途中で日本国籍を取得したはずです」
今野「出そろいましたね。ありがとうございました」
柏手「ありがとうございます」
今野「それにしても、自分の立場からチームをどうサポートできるかってことまで言う人、あまりいなかったような気がします」
柏手「そうなんですか?」
今野「そういう目線の人がいるんだなと思いました」
柏手「私たちはこの選手を獲ってきてなんてお願いは言えないので、いかに街を、そしてスタジアムを盛り上げるかってところなので。幸いなことに、グッズは反応を自分の目で確かめることができるので、わかりやすい部門だと思います」
今野「なるほど」
柏手「一喜一憂せずに、どこのカテゴリーにいようが、少しずつアップできれば……」
今野「そろそろお時間ということで、何か言い残したことは?」
柏手「ぜひ、新しいお店に来ていただければと思います」
今野「どうも。ありがとうございました」
構成:粕川 哲男