【ライターコラム「春夏秋橙」】J2昇格という明確な目標を掲げた意義

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、新体制発表会を取材したオフィシャルライターの戸塚啓さんに、J3という未知のカテゴリーで戦うチームの今季について所感を記してもらいました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
J2昇格という明確な目標を掲げた意義


有言実行を選んだクラブ

あとは、やるだけだ。

114()に行なわれた新体制発表記者会見では、佐野秀彦代表取締役社長が、原博実フットボール本部長が、1年でのJ2昇格という目標をはっきりと明言した。山本佳津強化部長と長澤徹監督からも、同様にJ2昇格をターゲットとすることが明かされた。

昨年の新体制発表会見では、具体的な目標が誰からも明らかにされなかった。チームの内側では、J1昇格が目標として共有されていたのだろう。あえて外部へ発信しなくて良かったのかもしれないが、個人的には「不言実行」ではなく「有言実行」を望んだ。

昇格を目標とし、その目標を対外的に発信しているチームと、していないチームが対戦したとする。拮抗した試合、ギリギリの攻防、ボールの奪い合いなどで、最後まで粘れるのは発信しているチームだと考える。勝つことで得られるもの、負けることで失うものが第三者にもはっきりしているほうが、当事者の「必死さ」は変わってくるからだ。昇格を使命とするチームと、ボーナスとするチームでは、勝負どころの頑張り方、踏ん張り方がまったく違ってくる、とも言える。 

ピッチでプレーする選手から「必死さ」が伝わってくれば、応援するファン・サポーターの熱も高くなり、チームを報道するメディアの視線にも厳しさが宿る。1試合、1試合を大切にする環境が、妥協を許さない空気感が、ピッチの外側から作られていく。

 

J3ならではの厳しさ

長澤監督も選手も、チームスタッフも、「J3は簡単ではない」と口をそろえる。全20チームの半数以上にあたる11チームは、J2で戦った経験を持つ。ヴァンラーレ八戸の石崎信弘監督のように、J1で采配をふるったことのある指揮官もいる。松本山雅FCの霜田正浩監督やツエーゲン金沢の伊藤彰監督のように、大宮を知る指揮官もいる。

J3は首都圏にホームタウンを置くチームが少ない。アウェイゲームの大半は、中長距離の移動を伴うものとなる。ピッチの内外でタフさが問われることになるだろう。

対戦相手はどこも、大宮戦に闘志を燃やしてくるだろう。J1で戦ってきた歴史を持ち、即戦力をそろえ、NACK5スタジアム大宮というすばらしいスタジアムを持つチームを、何とかして倒してやろうと考えるはずだ。大宮が戦うJ3は、他の19チームより厳しい、と言ってもいいのではないだろうか。

高いモチベーションで挑んでくる相手に気圧されることなく、自分たちも高い闘争心を持って試合に臨んでいく。J1J2との環境の違いを言い訳にもせず、勝利をつかんでいく。

どこまで自分に厳しくなれるか。チームメートと支え合えるか。

ピッチ内で自分たちを信じることができるか。その裏付けとなる練習ができるか。

目標達成へ向けて、本当に、やるだけだ。




戸塚 (とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

 

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