ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回から3回にわたり、2024シーズンからアルディージャに加わった新加入選手を紹介します。
【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓、粕川 哲男、平野 貴也
新加入選手紹介 第1回
覚悟を持って戦い抜く
1月9日のチーム始動日に、期限付き移籍での加入が発表された。「自分が決断するのに時間がかかってしまったので、発表が遅くなってしまいました」と言う。J3というカテゴリーで戦うべきかどうかを熟考し、オレンジのユニフォームを着ることを選んだ。
「自分の中の要らんプライドというか、そういう邪魔するものがあったんですけど、すべて捨ててきました。一人ひとりの選手と、スタッフと、コミュニケーションを取って一つになるというか、同じ方向を向いてできるようにまとめていければなと思います」
J1、J2で通算70点以上を記録してきた。12年のロンドン五輪に出場し、日本代表としてW杯予選に出場したこともある。実績は申し分なく、31歳はキャリアの円熟期だ。高さと強さを生かしたポストワークで攻撃の起点となりつつ、ゴール前での決定力を生かしてくれるだろう。
目標とする数字は掲げていない。1年でのJ2復帰はもちろんJ1昇格までも見据え、不言実行でチームの勝利に貢献する。
Profile
1992年11月18日生まれ、大阪府出身。187cm/79kg。FCルイラモスヴェジット→セレッソ大阪U-15→セレッソ大阪U-18→セレッソ大阪→東京ヴェルディ→セレッソ大阪→川崎フロンターレ→セレッソ大阪→浦和レッズ→横浜F・マリノス→ジュビロ磐田→横浜F・マリノスを経て、今季より大宮に加入。
16年のキャリアをチームに還元
09年に浦和レッズでプロデビューを飾った33歳は、キャリア16年目を迎える。2018年には前所属のファジアーノ岡山で、長澤徹監督のもとでプレーした。
「監督のやりたいことをまず自分が体現して、なおかつそれを若い選手たちに言葉でも伝えていくのは、自分の役割だと思っています。一緒にやっていた当時から徹さんもアップデートしているので、監督のやりたいことを学ぶ気持ちも常に忘れずにいたいです」
幼少期は埼玉県で過ごした。プロ5チーム目となる大宮アルディージャは、特別なチームと言ってもいいだろう。
「このタイミングでまた地元に帰って来られたのは縁だと思いますし、声をかけてくれたアルディージャのために、1年でJ2へ復帰できるように、自分の力をすべて出し切ります。自分がピッチに立ちたいという思いを強く持って、試合に出て貢献したい」
リーダーシップのあるCBとして、チームの勝利に貢献するとの強い気持ちを持つ。同時に、厳しい戦いが待ち受けているとの覚悟を固めている。
「J3を戦ったことがないので何とも言えないですけど、どのリーグもタフなのは間違いない。大宮だからこそ感じるプレッシャーもあるでしょうし、うまくいかないときにどう対処するか。そこは自分とか経験のある選手がリーダーシップを取っていきたい」
最終ラインはもちろんチーム全体を束ねる精神的支柱として、濱田が歓喜を呼び込む。
Profile
1990年5月18日生まれ、アメリカ出身。186cm/83kg。サンタクラララッカス(アメリカ)→浦和レッズユース→浦和レッズ→アルビレックス新潟→浦和レッズ→アビスパ福岡→ファジアーノ岡山を経て、今季より大宮に加入。
J3で結果を残し、J3を知る男
Jリーグに第一歩を記した19年のFC東京で、同U-23を指揮する長澤徹監督のもとでプレーした。「みんなに親われていて、熱心に指導してくれることが自分たちのエネルギーになっています」と、かつての指揮官との再会を喜ぶ。
J3のカターレ富山で2シーズン目を迎えた昨年は、30試合に出場して9ゴール3アシストの成績を残した。いずれもキャリアハイである。セントラルMFのポジションから相手ゴール前へ飛び出し、オープンプレーやセットプレーからヘディングシュートを多く決めた。チームトップの得点を決めた彼の活躍により、富山も最終節までJ2昇格争いを演じた。J3の戦いを知る意味でも、その加入は心強い。
「J3のチームは走ると言われがちです。もちろんそれはやっていきますが、このチームにはいい選手がそろっている。自分たちがいかにボールを動かすのかが大事になるでしょうし、賢くプレーしていきたいです」
チームには素早くフィットした印象だ。本人も好感触を得ている。
「自分を含めてお互いのことを知りながらのトレーニングで、日々成長できていると思います」
完全移籍で加入した28歳のブラジル人が、中盤を力強く支えていく。
Profile
1995年4月26日生まれ、ブラジル出身。180cm/80kg。ECサンジョゼ(ブラジル)→AAインテルナシオナル・ベベドウロ(ブラジル)→CAヴォトゥポランゲンセ(ブラジル)→グレミオ・オザスコ・アウダックス(ブラジル)→ECノヴォ・アンブルゴU-20(ブラジル)→CNマルシリオ・ジアス(ブラジル)→FC東京→横浜FC→カターレ富山を経て、今季より大宮に加入。
敵陣を切り崩すキーマン
移籍の理由を聞くと「徹さん」と即答した。プロ3年目だった21年、京都でコーチを務めていた長澤監督のことだ。「熱くて、付いていきたいと思える人。一緒にやれば成長できる」と、主力に定着していた琉球を離れて大宮にやって来た。
京都橘高校で全国高校選手権に出場した際、志木のグラウンドで練習したことがあるが、今もトップチームが志木で活動していると思っていたくらい、クラブについて知っていることは少なかったが、迷わずに決断したというから、監督への信頼の強さを感じる。
京都では、試合に出ている時期も、出ていない時期も、曺貴裁監督と長澤コーチのトレーニングに励んだ。「うまいだけじゃ、どうにもならない。そういう選手はいっぱいいる」とサッカー観を変えられ、チームを勝たせる選手への成長を促された。課題にしていた守備も強化するようになった。
学生時代から変わらないプレーの特長は、中盤からのアタック。ドリブルを仕掛けながら、パスも繰り出し、ゴールへ迫る。「どこで使われるか分からないけど、2列目なら、どこでもできる。攻撃で違いを出せる自信はある」と話す。昨季はJ3で7得点。敵陣を切り崩すキーマンとして期待がかかる。
Profile
1996年9月13日生まれ、奈良県出身。168cm/63kg。鳥見SS→YF奈良テソロ→京都橘高→関西学院大→京都サンガF.C.→FC琉球を経て、今季より大宮に加入。
4シーズンぶりの帰還
2016年、大宮ユースからトップチームに昇格した。しかし、待ち受けていたのは厳しい現実だった。塩田仁史、加藤順大、松井謙弥といった先輩たちの壁は厚く、メンバーにすら入れない。同期の黒川淳史、藤沼拓夢、川田拳登の3人が一足先に公式戦デビューを果たしていく中、3年間はプロのピッチに立つことができなかった。
記念すべきJリーグ初出場は2019年7月13日、鹿児島ユナイテッドFC戦で訪れた。先発フル出場を果たし、6-0の快勝に貢献。フィールドプレーヤーをしていた小学校時代に培ったキック精度やビルドアップ技術、GKに転向したJr.ユースのころからの特長である積極的な飛び出しで存在感を示し、自信を深めた。
ギラヴァンツ北九州での3年間の武者修行を経て、4シーズンぶりの復帰となる。3人の同期はチームを離れ、別々の道を行く。寂しさはあるが、その胸には、アカデミー出身者としての責任感と覚悟が宿っている。
「(大山)啓輔くんとか(吉永)昇偉もいませんけど、彼らの思いも含めて、大宮を“いるべき場所”に戻したい。ダサくてもカッコ悪くてもいいので、熱い気持ちを持って、勝つことに執念を向けてやっていきます」
Profile
1997年9月20日生まれ、埼玉県出身。188cm/81kg。伊奈小針SSS→大宮アルディージャJr.ユース→大宮アルディージャユース→大宮アルディージャ→ギラヴァンツ北九州を経て、今季より大宮に加入。