ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回はトップチームだけでなくアカデミーにも造詣の深い土地将靖記者が、U18所属の二人のGKについて焦点を当てた。

「ワク」と「慶太朗」。1枠を争うストーリー

GKは、試合に出られるのは基本的に一人。育成年代では1学年で在籍一人ということも珍しくはない。そうしたポジションで、激しくしのぎを削り合ってきた同い年の二人が大宮アルディージャU18にはいる。涌井寿大と海本慶太朗だ。

大宮U15から昇格した海本は、2019年にU-15日本代表にも選ばれ、同年の高円宮杯U-15選手権ではベスト4にも進出した。そこへ、涌井が高校進学のタイミングで大宮U18に移ってきた。お互いを「ワク」「慶太朗」と呼び合う仲の良い二人だが、同時に強烈なライバル関係にもある。

「慶太朗はいい経験をしてきていると思います。いいライバルであり、いい仲間を持ったなと感じました」（涌井）

「一緒にやってみて、うまいな、この人がこれから自分のライバルになるんだな、と感じました」（海本）

その1枠を争う戦いは、早くも1年目から始まった。日本クラブユース選手権の関東大会では海本が全国への切符の獲得に貢献。本大会では涌井が奮闘し、ベスト4を勝ち取った。2年生になった昨年の高円宮杯プレミアリーグでは、海本が10試合、涌井が7試合と出場を分け合った。日本クラブユース選手権の3試合を合わせれば、両者10試合ずつとまったくの同数である。レギュラーの座を巡り、拮抗した戦いが続いている。

「毎日の練習でも、ミスしたりどっちかの調子が偏ると、スタメンが替わると思っています。慶太朗がいると常に気を抜けないですし、それで自分も成長できるという実感があります」（涌井）

「自分としてはこの状況がすごく楽しいです。自分と一緒ぐらいか、もしくは自分より上のライバルがいるのは刺激になります。先発で出るのか、ベンチメンバーになるかがわからない状態で続けていられるのは、ワクにも感謝しています」（海本）

そうした張り詰めた日々が、二人を高みへ押し上げる。昨年に引き続き今年も、涌井と海本はトップチームへ2種登録された。J2開幕戦となった横浜FC戦では、ついに涌井がサブGKとしてベンチにも入った。試合までの1週間はトップチームに帯同、トップの選手のより速いシュートを受け、また、松本拓也GKコーチの指導を吸収し、「U18では多少余裕を持ってプレーできるようになった」と、得たものは少なくない様子。涌井に先を越された形となった海本も、「準備はできている」と次の機会を目標に定めている。

正GKの入れ替わりが激しいことはネガティブに捉えられることも少なくないが、いまの大宮U18に限って言えば、それは二人の成長が著しいことの証かもしれない。最終学年となる今年、彼らの最後の戦いから目が離せない。

涌井 寿大 (わくい としひろ) /GK
生年月日:2004年10月25日 (17歳)
身長/体重:179cm/75kg
出身地:千葉県
出身チーム:セレステ成田JFC - FCラルクヴェール千葉 - 大宮アルディージャU18
代表歴:U-17日本代表候補(2021年)

海本 慶太朗 (かいもと けいたろう) /GK
生年月日:2004年7月6日 (17歳)
身長/体重:188cm/79kg
出身地:埼玉県
出身チーム:浦和レッズジュニア - 大宮アルディージャU15 - 大宮アルディージャU18
代表歴:U-15日本代表(2019年) 、U-16日本代表候補(2020年)、U-17日本代表候補(2021年)