Vol.004 早草 紀子「夏しか“見られない系”」【ファインダーの向こうに】

クラブ公式サイトなどで目にするアルディージャの写真は、その多くがプロのカメラマンが撮影したものです。彼らが試合中に見ている選手たちの姿は、スタンドから見ているそれとは少し違います。ファインダー越しにしか見えない風景を、クラブオフィシャルカメラマンが綴ります。


Vol.004 早草 紀子

夏しか“見られない系”


……暑過ぎる。湿度も高く、日中に全力で太陽に熱されたピッチ周辺は、何とも言えないジットリとした空気が蓄積されている。地べた座りで撮影をする私としては、下から上から暑さに挟まれる苦行シーズンの到来に、カメラバックに忍ばせた塩分&水分へ全幅の信頼を寄せながら乗り切る覚悟である。

当然、ピッチの選手たちはキックオフの笛から時間を要すことなく、全身から汗が噴き出している。けれど、こんな過酷な状況だからこそ狙える垂涎もののカットがある。そう、“ほとばしる汗”系だ。もちろん、大雨の際にも雨粒がほとばしるが、夏の今でしか得られないマニアックさからすれば、汗に軍配があがる。私の中では、もはや夏の風物詩と言っても過言ではない。

狙いどころはセットプレーだ。CKの前などは、暑さのあまり、ゴール両サイドにあるドリンクボトルを欲して選手溜まりが出来る。飲むだけでなく、両手や両足、頭に水をかける選手も少なくない。そうすると汗、プラス水効果で、最初のコンタクトプレーでは増し増しでほとばしってくれるわけだ。

汗を“魅せる”ためには、ナイトゲームであることも重要。明治安田J2第23節・京都サンガF.C.戦での、このロビン シモヴィッチ選手のゴールシーンは、いろいろな要素が重なっていた。勝ち越しゴールであれば、なお最高だったのだけれど(心の声)。

試合後に写真をセレクトするときには新たな発見があった。コンタクトの瞬間は、てっきりボールがあたる頭部から汗が吹き飛んでいると思い込んでいたが、「汗は手の指からも流れるように飛び散って行くのかぁ」とか、スチール写真ならではの魅力に触れた気がした。

今回はこの写真を選んだものの、候補には茨田陽生選手のドリブルや大前元紀選手のFKなどもあった。夏の時期は、ちょこちょことこういった“ほとばしり系”写真が含まれる。時折、気になった写真を大きな画面で見てみると、印象が変わる写真があるかも。ぜひお試しあれ。


早草 紀子 (はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。

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