Vol.002 髙須 力「覚悟」【ファインダーの向こうに】

クラブ公式サイトなどで目にするアルディージャの写真は、その多くがプロのカメラマンが撮影したものです。彼らが試合中に見ている選手たちの姿は、スタンドから見ているそれとは少し違います。ファインダー越しにしか見えない風景を、クラブオフィシャルカメラマンが綴ります。



Vol.002 髙須 力

覚悟


NACK5スタジアム大宮のピッチサイドは狭い。特に選手が入場する前のベンチ付近は、身動きを取ることさえ難しい。

それがサッカー専用スタジアムの魅力であり、選手とサポーターの一体感を生んでいることは知っている。それは、分かっている。だから、いつもここでは「16-35mm」の広角レンズをチョイスする。

良い意味での違和感を覚えたのは、今シーズンからキャプテンに就任した大前元紀が目の前にいたからだ。これまでは、列の一番後ろが彼の定位置だった。

思えば、彼が高校生だったころから撮影している。清水エスパルスのエースとして活躍していたころはもちろん、一度きりだが、ドイツのデュッセルドルフでプレーしている姿も撮った。イメージとしては、チームの誰からも好かれる明るい性格の持ち主。どれだけ年月が経っても、その芯となる部分は変わらない。

この日も、周りにいたチームメートとハイタッチを交わしたり、関係者と笑顔で話をしたりする姿があった。リラックスしているようだった。

緊張が走ったのは、ファインダーを覗き込んだ瞬間だ。大前がキャプテンマークを巻き始めた。言葉にするのは難しい。だが確かに、空気が変わった。彼の覚悟が周りへと伝播し、その場の空気を一変させたようだった。そう解釈するしかない。抜けるような空の青さも、緊張感を増幅させていた。

アングルを下げ、無意識にシャッターを切った。その背中はたくましく、今まで見てきたどの大前よりも大きく見えた気がした。


髙須 力 (たかす つとむ)
1978年、東京都出身。02年に独学でスポーツ写真をはじめ、2006年よりフリーランスとなる。サッカーを中心に様々な競技を撮影。2007年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。

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